障害者雇用の給料は安くて生活できない?月収アップ対策を紹介
更新日:2024年06月17日

障害者として雇用されると給与が低いと感じることがあるのではないでしょうか。働くことは人生を豊かにしたり、夢を実現するうえで社会参加の非常に重要な部分でもあります。安定した生活には安定した労働が不可欠なのは障害があってもなくても変わりありません。本記事では調査を基に、障害者の給与の実情と、その根本にある雇用形態の実態について、さらに給与が安いと感じた時に何が出来るのかについて紹介します。
目次
障害者の給料は安いというイメージ

「障害者の給料は安いのか?」
当事者である障害者の中も含め、日本では一般的に障害者の給料は安いというイメージはあります。その根拠はなんでしょうか。
2016年に「障害者差別解消法」が施行されましたが、それ以前に「障害者基本法」においても、障害があることを理由に差別したり、権利利益を侵害する行為は禁止されています。
障害者雇用枠で採用される場合、単純労働、軽作業、清掃、事務補助などの仕事を任されることが一般的です。障害者雇用枠で従事する仕事は、誰にでもできる仕事が用意されていることが多いのも現状と言えます。
また、障害者福祉サービスの就労継続支援事業所での労働もその例にもれません。A型事業所は雇用契約を結ぶため、最低賃金は保障されます。利用者の体調や特性に合わせた労働時間となるため、月額給与は平均で6~8万円といったところが相場のようです。
B型事業所の場合、雇用契約を結ばないため、支払われる労働に対する対価は工賃と呼ばれます。工賃月額は1~2万円程度が相場で、最低賃金を下回る場合がほとんどです。
なお、2024年の調査によると、A型の月額給与全国平均は91,451 円、B型の月額工賃全国平均は24,141 円でした。
このような障害者雇用枠で用意されている仕事や、福祉サービス事業所における工賃の実態は障害者の給料が安いというイメージの一端であるかもしれません。
では、就労における障害者の賃金は、実際のところどうなっているのでしょうか。
障害者雇用の平均給料
厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」から「障害者の給与は安い」というイメージに対する現状を見ていきましょう。
「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、従業員5人以上の事業所での調査では、現在の障害者の被雇用者総数は約110万7,000人です。
内訳は、
◇身体障害者が約52万6,000人
◇知的障害者が約27万5,000人
◇精神障害者が約21万5,000人
◇発達障害者が約9万1,000人
(※重複障害が含まれるため合計は一致しない)となっています。
同じ調査から、令和5年度の労働時間別の月額給与を障害別に見てみます。

身体障害者の給料が突出していますが、障害者全体の平均としては低くなってしまいます。これに対して、一般就労(短時間労働者を除く一般労働者)の平均賃金は月額31万8,300円(※厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より)となっており、一般の平均水準と比較すると、障害者雇用の給与は全体的に低い傾向にあることが分かります。
一般雇用との給料の差
一般雇用と障害者雇用の間には、実際の生活を考える上で知っておくべき給料の差が存在します。
厚生労働省の「毎月勤労統計調査(令和7年4月分結果速報)」によると、一般雇用の平均月収は約30万2千円です。一方、障害者雇用はおおむね10万〜20万円台前半にとどまり、両者には一定の開きがあります。
この月収から現実的な生活設計を考えると、給料のみでの完全な一人暮らしは経済的に厳しくなる傾向があります。そのため、無理のない生活を送るには「障害年金」と組み合わせたり、実家やグループホームの利用を検討したりするなど、トータルでの収支を意識することが大切です。
給料の差に不安を覚えるかもしれませんが、障害者雇用は自身の体調に合わせた配慮を受けながら、無理なく長く働けるメリットがあります。このような差が生まれる要因は、次の「障害者雇用の平均年収が低いと言われる理由」で解説します。
障害者雇用の平均年収が低いと言われる理由
非正規で働いている人が多い
日本全体の平均年収は2018年で約430万円で、障害者の平均年収とは200万円以上違うという結果になるようです。しかしながら、ここに雇用形態の問題が絡んできます。
日本全体での労働者の正規雇用者の割合(H26年調べ)は約60%です。一方で障害者の場合は障害別に以下の通りです。

身体障害者以外の正規雇用率が著しく低いのがわかります。これは当然ながら障害者だから正規雇用されないのではなく、障害によるなんらかの制約によりフルタイムで働ける障害者が少ないということです。
実際、週30時間以上働く障害者の割合は以下の通りとなっています。
◇身体障害者…79.8%
◇知的障害者…65.5%
◇精神障害者…47.2%
◇発達障害者…59.8%
これ以外の障害者の労働時間は30時間未満、20時間未満と短くなります。つまり、多くの障害者が正規雇用ではない契約社員、パート・アルバイトという雇用形態や時間短縮労働であるため給与が安くなるという実態が見えてきます。正規雇用でなければ原則ボーナスの類もありませんのでその分の差も大きいでしょう。
平均勤続年数も、身体障害者で約10年と比較的長く、知的障害者で約7年、精神障害者、発達障害者で約3年と短い傾向にあり、昇給や時給アップの機会も障害のない人よりも限られてきます。
このような障害者の労働の実態から、障害者の給与が安いのには理由があることがわかります。結論としては、”障害者の給与は安い”というのは障害から来る制約による非正規雇用や時短労働が多いというのが理由で、障害がない人と比べて不当に安いということではありません。
業務能力に応じて減額特例制度の対象になるケースがある
障害のある方の場合、障害の特性や体調によって、作業スピードがゆっくりになったり、対応できる業務範囲や勤務時間に制限が生じたりすることがあります。そのため、障害のない労働者と比較すると額面上の給与が低くなるケースがありますが、これは決して不当に安い賃金が設定されているわけではありません。
国には、一律に最低賃金を適用することでかえって皆さんの雇用のチャンス(働く機会)が狭まってしまう事態を防ぐため、「最低賃金の減額特例制度」という仕組みが設けられています。
この制度は、単に「障害があるから」という理由だけで給料を下げられるものではありません。障害が従事する業務に直接大きな影響を与えており、業務能力への支障が著しいと認められる場合に限り、企業が労働基準監督署を通じて都道府県労働局長の許可を得て適用されるものです。
減額率についても国が定めた上限があり、皆さんの職務内容、実際の成果、労働能力、経験などを総合的に検討した上で適切に決定されます。つまり、個々の能力や負担に合わせた公平な基準のもと、無理なく安心して働く機会を守るための制度として運用されているのです。
就いている職種ではキャリアアップがしづらい
障害者雇用枠で採用される場合、単純労働、軽作業、清掃、事務補助などの仕事を任されることが一般的です。障害者雇用枠で従事する仕事は、誰にでもできる仕事が用意されていることが多いのも現状と言えます。そのため、同じ職場で長く働いても基本給が上がりにくく、平均年収が低くなる要因の一つとなっています。
安定した生活を送るために何ができるか?
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障害者の給与が安いというのは、統計調査上事実であり、それには障害者が抱える制約が背景にあることがわかりました。
しかしながら、給与が低い水準にあるのも事実です。安定した収入がなければ安定した生活も自己実現もあったものではありません。
実際、障害者は自身の給与についてどう思っているか、障がい者総合研究所の「給与への満足度に関するアンケート調査」の結果を参照します。
本アンケートは障がい者総合研究所が2014年に独自に行なったインターネット調査で、有効回答者数は827名です。
給与への満足度は「とても満足している」8%、「まあまあ満足している」35%、「あまり満足していない」36%、「まったく満足していない」21%という結果が出ています。満足している人は約40%、満足していない人は約60%といったところです。
給与に満足していない理由としては
「希望の生活水準に足りていない」
「今後の年収アップが期待できないから」
「同年代や一般的な水準と比較して少ないから」
という回答が上位に挙げられてます。この回答は障害者特有のものというよりも、所得、給与収入が低い人全般が感じていることとも言えます。
しかしながら、逆に障害者の場合、障害者だからこそ利用できる制度があり、それを有効に活用することも安定した生活につながる可能性もあります。ここではいくつかの主要な既存の制度をご紹介し、次に安定した収入を得ることができる相談先をご紹介します。
最大限に利用したい安定した生活につながる制度①障害年金
障害年金とは、国民年金・厚生年金の加入者が障害を受傷した場合、申請し、所定の条件を満たせば受給できる年金です。
20~65歳の加入期間以前に障害状態になった場合には「20歳前障害による障害基礎年金」があります。多くの障害者の方は受給していると思いますが、自分の障害や疾病は当てはまらない、制度に頼りたくないという人も、現在の労働収入をカバーできる可能性もあります。一度、市町村の年金関係窓口で相談してみることをおすすめします。障害年金の額等の詳細についてはこちらをご参照ください。
最大限に利用したい、安定した生活につながる制度②障害者の医療関連制度
国の制度として、障害者総合支援法による自立支援医療制度があります。内部障害を含む身体障害者には更生医療(身体障害児には育成医療)、精神障害者には精神通院医療等、該当する障害に関する医療について、所得区分に応じて月額の負担上限があります。
これとは別に各市町村に健康保険加入者である障害者に医療費の助成制度があります。条件や助成金額などは市町村によって異なります。自立支援医療及び、市町村ごとの医療費助成については、各市町村の医療・福祉関係の部署に問い合わせる必要があります。
最大限に利用したい、安定した生活につながる制度③ハローワーク(障害者窓口)
正式には公共職業安定所といわれる、職業を紹介する公的機関で、専門援助部門の窓口(障害者窓口)では障害者への職業相談や求人紹介を行なっています。
専門の職員を配置しており、障害者雇用制度や就職活動、求人募集している企業の対応や実績なども把握しています。自分だけで就職・転職活動をするより、その可能性は大きく高まります。無料のサービスですので大いに利用したいところです。
最大限に利用したい、安定した生活につながる制度④公的施設、交通機関等の割引制度
こちらもご存じの方も多いかと思いますが、公的な施設や公共交通機関、一般企業の施設やサービスについても障害者割引が適用されるケースがあります。
航空会社の場合、大手には障害者手帳の等級等に応じて障害者と介護者、または障害者のみに30~40%前後の割引があります。
鉄道の運賃についても手帳の等級に応じて障害者と介護者または障害者のみに半額が適用されます。ただし、精神障害者保健福祉手帳は対象外とする鉄道会社もありますので、事前に確認が必要です。
その他、公営の交通機関や施設、高速道路料金、映画館や遊園地など割引制度がありますので、利用の際、問い合わせてみましょう。
給料アップを狙うには?
資格を取得する
社内の制度に資格手当がある場合、資格を取得するというのは一つの手段です。資格手当とは、必ずしも全社に設置されている制度ではありませんが、業務に必要な資格や、スキルアップを目的とした資格取得を給与や一時金として反映させる、会社の福利厚生制度の一つです。現在の仕事に関連する資格や、仕事をさらに発展させるような資格を取得することで、結果的に希少価値の高い人材になるでしょう。
給料が高い企業に転職する
転職という機会を活用して、自分の今の給料よりも高い給料を提示している企業への転職を挑戦することもで給料アップにつながるでしょう。自らのスキルを棚卸しし、企業に対して適切にアピールすることで、希望する年収に近い仕事に就くことも可能になるでしょう。
障害者雇用と障害者の人事評価に前向きな企業への転職
現在の職場で適切な評価や昇給が難しいと感じる場合は、障害者の人事評価に前向きな企業へ転職することが給料アップへの有効なアプローチとなります。
具体的には、すでに障害のある方の活躍実績がある企業や、「障害者正社員化コース」のようなキャリアアップを後押しする制度を取り入れ、中途採用に積極的な企業を検討するのがおすすめです。
また、昨今普及している在宅勤務やリモートワーク環境が整った企業を選ぶことも重要なポイントです。通勤が困難で勤務時間を抑えざるを得なかった方でも、在宅勤務を活用すれば労働時間を増やせる可能性が高まり、結果として月収の増加や職業選択の幅を広げることにつながります。
障害者の方で給料があがった事例
障害者雇用枠で働く場合でも、給与アップやスキルアップの機会は公平に与えられています。 ここでは、実際に給料が上がった3つの事例をご紹介します。 なお、これらはあくまで一例であり、必ずしも全員の給料がアップするわけではありません。
事例1:正社員雇用を目指してキャリアアップした
障害者雇用の給料が低いと言われる大きな理由に、非正規社員で雇用されている割合が高いことが挙げられます。実際に、身体障害者の約半数は正規雇用されている一方、知的障害、精神障害、発達障害がある方の8割程度は非正規雇用というデータもあります。このように障害者雇用枠での就職は非正規からのスタートとなるケースが多く、最初は給料が低くなる傾向にあります。
しかし、企業が設ける「正社員登用制度」を活用し、正社員へのキャリアアップと給与アップを実現した事例が存在します。多くの企業では、パート・アルバイトや契約社員などの非正規雇用から正社員へ雇用形態を変更できるこの制度を用意しています。
登用基準は企業ごとに異なり、半年や1年などの勤務期間が基準になる場合や、業績などの人事評価が重視される場合、筆記や面接などの登用試験が設けられている場合などさまざまです。ただし、企業によっては正社員登用制度自体が存在しないこともあるため、将来的なキャリアアップを見据えるなら、採用面接時に制度の有無をしっかり確認しておくことが大切です。
事例2:資格を取得して資格手当がついた
働きながら業務に関連する資格を取得したことで、会社から資格手当が支給されるようになり、給与アップにつながった事例もあります。企業によっては、特定の資格を持っていないと担当できない専門的な業務が存在します。そうした職場で対象となる資格を取得できれば専門的な業務に携わることが可能になり、結果として毎月の給料が上がる可能性が高まります。
また、資格試験への挑戦自体が、現在の仕事に関わる知識や技術を一段と高められるという大きなメリットをもたらします。専門的なスキルを磨くことで社内での評価が上がり、中長期的な収入増加のきっかけとなるでしょう。
さらに、将来的に待遇向上を目指して転職したいと考えた際にも、何か資格を持っている方が自分の能力を客観的に証明できるため、転職活動を有利に進めることができます。現在の環境ですぐに大幅な給料アップが難しい場合でも、障害者雇用枠で着実に給料アップを目指すための有効な手段として、まずは実務に直結する資格試験に挑戦してみるのがおすすめです。
事例3:好条件の会社へ転職した
今の職場で給料を上げることが困難な場合、より待遇の良い会社へ思い切って転職したことで給料アップを実現した事例もあります。本人がどれだけ「収入を増やしたい」と強く望んで努力していても、そもそもベースとなる月収が低めの業界に属していたり、昇給制度がほとんどない会社で働いていたりする場合、個人の努力だけで収入を増やしていくことは極めて難しいでしょう。これは障害者雇用枠に限った話ではなく、一般雇用であっても全く同様のことが言えます。
そのため、本格的に給料アップを目指のであれば、より好条件を提示してくれる別の会社への転職を視野に入れてみましょう。収入改善の具体的なアプローチとして、現在の会社よりも給料水準が高いとされる別の業種や職種へ転職するのもひとつの手段です。
これまで培ってきたご自身のスキルや経験を正当に評価し、より充実した基本給や手当、福利厚生を用意してくれる企業へ移ることで、前職から大幅に給与を改善し、安定した生活基盤を築くきっかけになります。
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いかがでしたか。
現在の日本の障害者雇用の機運は労働人口の問題や国連での障害者の権利条約の発効もあり、高まっていると言えます。しかし障害者雇用枠の職業は決して高い賃金とは言えない一般職が多く、また障害からくる制約によって正規雇用が困難な現実が障害者の給与を低くしていることがわかりました。
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