2024年障害者雇用促進法改定内容と合理的配慮の提供義務化について
更新日:2025年06月25日
「障害者雇用促進法」は、障害者の職業の安定を図ることを目的とする法律です。1960(昭和35)年に施行された「身体障害者雇用促進法」が基になっており、これまで何度かの改正が行われています。本記事では2024(令和6)年4月1日から施行された内容について解説します。
目次
障害者雇用促進法 2024(令和6)年の改正内容
2024(令和6)年4月1日から施行された「障害者雇用促進法」の改正内容は次の通りです。
法定雇用率が2.3%から2.5%に変更
障害者雇用促進法では、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があると定められています。
民間企業の「法定雇用率」は、これまで2.3%(令和5年度)でしたが、 2024(令和6)年4月からは0.2%引き上げられて2.5%になっています。これにより、対象事業主の範囲も広がって、「従業員43.5人以上」から「従業員40.0人以上」へ拡大しました。
さらに、2026(令和8年)には「法定雇用率」が2.7%まで引き上げられることが予定されています。
参考:厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」
週20時間未満の勤務でも対象になる
法定雇用率にカウントできるのは、障害者手帳を所持する障害者だけですが、等級や労働時間によってカウント方法が異なります。このカウントに週所定労働時間が10時間から20時間未満の精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者を算入することが認められることになりました。
障害者雇用調整金・報奨金の支給方法の調整
障害者を雇用するには、施設や設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理などの経済的な負担が伴います。
「障害者雇用納付金制度」では、常用労働者の総数が100人を超える事業主において障害者法定雇用率未達成の場合に納付金を徴収し、達成した事業主に納付金を財源として障害者雇用調整金や報奨金などを支給しています。
この障害者雇用調整金・報奨金について、2024年度の実績に基づく2025年度の支給から、一定数を超えた場合に調整(減額)されることが決まっています。
参考:厚生労働省「障害者雇用調整金・報奨金の支給調整について」
納付金助成金の新設・拡充
労働政策審議会障害者雇用分科会の資料には、今回の制度改正において令和6年度から新たな助成金を新設するとともに、既存の助成金についても拡充を行うと記載されています。
なお、現在(2025年5月)厚生労働省のホームページには「助成金の詳細な取扱いについては、施行までに改めてお示しする予定です」と記載されています。詳しくは厚生労働省のホームページでご確認ください。
参考:厚生労働省「新設助成金の設定及び既存助成金の拡充について(案)」
参考:厚生労働省「1.障害者雇用納付金助成金の整理・拡充について」
・中高齢者等障害者職場適応助成金
年齢を重ねたことによって、職場に適応するのが難しくなった中高年(35歳以上)の障害者の雇用継続を図るために必要な措置に対する助成金。
①業務の遂行に必要な施設の設置などへの助成(障害者作業施設設置等助成金の拡充)
②職務遂行のための能力開発(職場介助者等助成金の拡充)
③業務の遂行に必要な者の配置または委嘱(職場介助者等助成金の拡充、職場適応援助者助成金の拡充)
・障害者雇用相談援助助成金
労働局などによる雇用指導と一体となって、障害者の雇入れや雇用管理に関する相談援助事業(障害者雇用相談援助事業)を事業主に実施した場合に支給される助成金。
・障害者職場実習等支援事業
障害者を雇用したことがない事業主が、職場実習の実習生を受け入れた場合などに支給される助成金。
・健康相談医の委嘱助成金
障害者の雇用管理のために必要な専門職(健康相談医)に委嘱した場合に支給される助成金。
・職業生活相談支援専門員の配置又は委嘱助成金
障害者の雇用管理のために必要な専門職(職業生活相談支援専門員)の配置または委嘱した場合に支給される助成金。
・職業能力開発向上支援専門員の配置又は委嘱助成金
障害者の職業能力の開発および向上のために必要な業務を担当する方(職業能力開発向上支援専門員)の配置または委嘱した場合に支給される助成金。
・介助者等資質向上措置に係る助成金
障害者の介助の業務を行う方の資質の向上のために、措置を行った事業者に支給される助成金。
・中途障害者等技能習得支援助成金
中途障害者が職場復帰した後、職務転換後の業務に必要な知識や技能を習得させるための研修を実施した事業者に支給される助成金。
合理的配慮の義務化
障害者差別解消法が改正されて、令和6年4月1日から事業者による合理的配慮の提供が義務化されました。合理的配慮の提供とは、障害のある人の社会的なバリアを取り除くために、負担が重すぎない範囲で事業者が必要な対応をすることです。合理的配慮の例としては次のようなものが挙げられます。
身体障害者への合理的配慮の例
知的障害者への合理的配慮の例
精神障害者への合理的配慮の例
発達障害者への合理的配慮の例
2025年以降の障害者雇用促進法 改定内容
除外率の引き下げ(令和7年4月)
除外率制度とは、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、障害者の雇用義務を軽減する措置として設けられた制度です。2025年4月に施行された障害者雇用促進法の改正では、この除外率が各除外率設定業種ごとにそれぞれ10ポイント引き下げられました。*これまで除外率が10%以下であった業種は除外率制度の対象外。
法定雇用率の段階的引き上げ(令和8年7月)
民間企業の「法定雇用率」は、 2024(令和6)年4月から2.5%になっていますが、2026(令和8)年7月にさらに0.2%引き上げられます。
障害者の就職転職のプロがサポート
法定雇用率の引き上げによって、企業で活躍する障害者が増えることが期待されています。しかし、一方で障害者の就職は「自身の希望や障害特性に合った企業や仕事を見つけるのが難しい」「就労に必要なスキルや知識が足りない」などの理由で、うまく進まないケースも少なくありません。障害のある方が就職活動で困った時には、障害者の就職に詳しい専門家に相談しましょう。
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まとめ
2024(令和6)年4月1日から施行された「障害者雇用促進法」の改正によって、法定雇用率の引き上げや週所定労働時間が10時間から20時間未満の精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者を法定雇用率に算入が認められることとなり、障害者の働く機会が拡大しました。これまで障害によって就職が難しかった方も就職できるチャンスです。