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障害者の面接で聞いてはいけない質問や配慮すべきこと

更新日:2020年07月07日

企業には、憲法で認められている経済活動の自由を根拠にして、原則として「採用の自由」が保障されています。採用の自由を実現するためには、企業は採否の判断に重要となる事項については確認する必要があります。しかし、職業安定法に基づく指針では、人種や民族、社会的身分、思想・信条などについては、特別な職業上の理由がある場合を除いて個人情報を収集してはならないとしています。一方、憲法22条では国民に対して「職業選択の自由」を保障しています。そのため、企業は応募者の職業選択の自由を保障するために、差別せずに公平かつ差別のない選考を行うことが求められます。厚生労働省のホームページでは、「公正な採用選考の基本」として、本人に責任のない事項の把握や本来自由であるべき事項、採用選考の方法について、13項目の「採用選考時に配慮すべき事項」が示されています。企業の採用担当者が、面接試験で応募者に質問する際には、これらの事項について十分に認識して配慮することが重要です。

採用面接における質問を制約する法律

企業が労働者を採用する際には、さまざまな法律によって周知しなければならない事項や禁止されている事項が定められています。人事担当者や採用担当者が、内容を知っておくべき雇用関係の法律には、職業安定法、男女雇用機会均等法、雇用対策法、労働基準法、個人情報保護法、労働衛生安全法、労働組合法などがあります。このうち「男女雇用機会均等法」と「労働組合法」に関連しては、特に次のポイントに配慮しましょう。

 

男女雇用機会均等法

「男女雇用機会均等法」には、雇用における男女における均等な機会と待遇の確保や、育児休業や介護休業などに関することが定められ、男女の性別を理由とした募集や採用の差別が禁止されています。女性の応募者に限定して、男女で差がある能力について質問することや、結婚や出産などについて質問することは、男女雇用機会均等法の趣旨に違反する可能性があります。

 

労働組合法

「労働組合法」の第7条1項には、労働者が労働組合から脱退する、もしくは、加入しないことを雇用条件とするような行為をしてはならないとしています。したがって、採用試験の面接時であっても、労働組合の活動に関心があるかや、労働組合に加入するつもりかなどの質問は避けるべきです。

 

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採用面接で聞いてはいけないこと

厚生労働省が示した「採用選考時に配慮すべき事項」について、基本的な考え方やNGとなる質問の例を解説します。

 

基本的な考え方

企業が採用選考を行う際には、「応募者の基本的人権を尊重すること」と「応募者の適性や能力のみを基準として行うこと」を基本的な考え方とすることが大切です。また、公正な選考を行うためには、雇用条件や採用基準に合った全ての人が応募できるようにすることと、本人がもつ適性や能力以外のことを採用の条件にしないことが必要です。

 

そのため、面接試験では、応募者の適性や能力に関係のない事柄については質問しないことが重要です。これらの質問は、採用基準とするつもりがなくても、把握してしまえば結果として採否に影響を与える可能性があり就職差別につながる可能性があります。応募者の適性や能力に関係のない事柄についての質問の例を紹介しましょう。

 

本籍、住所に関する質問

「あなたの本籍地はどこですか」

「あなたのお父さんやお母さんの出身地はどこですか」

「あなたの住んでいる地域は、どんな環境ですか」

「あなたの自宅付近の略図を書いてください」

などの応募者の本籍や住所に関する質問は、就職差別につながり、公正な採用選考から特定の人たちの排除につながる恐れがあります

 

家族、財産に関する質問

「あなたのお父さんの勤務先を教えてください。また役職は何ですか」

「あなたのご両親は共働きですか」

「あなたの家は一戸建てですか」

「あなたの住んでいる家は持ち家ですか、借家ですか」

 

本籍や住所、家族構成や家族の職業、地位、収入、資産など、本人に責任のない事項を採否決定の基準とすることはもちろん、応募用紙などに記入させたり面接で質問して把握することも就職差別となります。

 

思想、信条、宗教に関する質問

「家の宗教は何ですか」

「政治や政党に関心がありますか」

「尊敬する人物を言ってください」

「学校外での加入団体を言ってください」

 

思想や信条、宗教、人生観、支持する政党など、信教の自由や思想・信条の自由といった憲法で保障された個人の「自由権」に属する事柄です。これらの事項によって採否を決定することは、基本的人権を侵すこととなります。また、直接質問しなくても形を変えた質問を行い、把握しようとするような行為も行うべきではありません。

 

男女雇用機会均等法に抵触する質問

「結婚や出産をしても働き続けられますか」

「結婚の予定はありますか」

「実家か一人暮らしか」

「何歳ぐらいまで働きたいですか」

 

面接試験の際に、女性だけに業務と直接関係のない質問をするのは、男女雇用機会均等法の趣旨に反する行為となります。

障害者の面接を行う際に注意する点

障害を持つ応募者に対する面接では、一般の雇用の場合と同様に、これまで解説してきた事項に配慮する必要がありますが、加えて「現在の障害がどのような状態であるか」や「想定している業務をどの程度出来るか」「どのような合理的配慮が必要か」などを確認することが重要です。特に知的障害者や精神障害者の採用に関しては「安定的に就業を継続できるか」が重要なポイントです。面接では次の点に配慮しましょう。

 

『面接』は複数回実施する

入社後のミスマッチを防ぐためにも、企業と障害者の双方が十分に理解することが大切です。企業が、応募者の障害がどのような状態でどのような点に配慮する必要があるかを、1度の面接ですべて把握するのは非常に困難です。同様に、障害者も自分がこの企業で働き続けることができそうかを、1度の面接で判断するのは難しいでしょう。

 

できるだけ面接を複数回実施して、お互いの理解を深めるようにしましょう。

 

生活リズムの確認

障害の症状や程度は、人それぞれで障害の種類だけで把握することはできません。本人に質問して確認することが大切ですが、そもそも主治医が就業可能であると判断しているかどうかを最初に確認します。

 

うつ病」や「双極性障害(躁うつ病)」に代表される気分障害では、現在働けるコンディションなのかどうかを確認することも大切です。朝の起床時間や夜の就寝時間、睡眠の質、食事の時間や3食食べているか?といった質問をして規則正しい生活を送っているかを確認すると、ある程度は就業が可能かどうかの判断ができます。

雑談から本人を知る

障害のことは、デリケートな問題で企業としてもどう質問してよいのか判断が難しいと思います。障害者雇用を目指す人の多くは、自身に障害があることを開示して求人に応募していますが、なかには自分の障害についてあまり話したがらない人もいます。また生まれつきではなく、途中で障害になった人の中には、障害があることを受け入れられずに悩んでいる人もいます。

 

面接という緊張した場面で、本当の状態や気持ちを聞くのは難しいものです。障害者の面接では、応募者がリラックスして、「この面接官ならなんでも話せる」といった安心した気持ちになるような状況を作ることが大切です。かしこまって質問すると、どうしても緊張してしまいがちです。雑談を通じて応募者について知るような面接の進め方も検討してみましょう。

障害別の面接時の留意点

面接で障害について質問ことはすなわち、その人のナイーブな点に触れなければならないため、面接官としては非常に気を使うものです。入社後のミスマッチを防ぎ、障害者が働きやすい環境を整備したり、具体的にどのような点に配慮が必要かなどを判断するには、障害について出来るだけ詳しく質問する必要があります。障害者の面接では、次の点に留意して進めるようにしましょう。

 

障害について質問する際は本人の了承を得る

まず、企業には安全配慮義務があり、従業員の障害の程度や困難な事、緊急時の対応などを把握する必要があるという点を障害者に理解してもらいましょう。入社後の配属先や業務内容、働くためにどのような配慮が必要かを検討するために、いろいろな質問をすることを本人に説明して、同意を得たうえで面接を進めましょう。また障害の種類によって、採用試験や面接時に配慮が必要なケースもあります。

 

身体障害

下肢障害や体幹障害により、車いすや杖を使用している場合、試験会場や面接室まで通路を十分に確保する必要があります。また、トイレに時間がかかる人もいるため、面接時間が長くなる場合には、休憩時間を取るなど配慮しましょう。

 

視覚障害の場合には、転倒しないように通路の幅や周辺に不要なものが置かれていないかどうかチェックします。聴覚障害の場合には、読唇しやすいように口を大きくはっきり動かして話すようにします。また状況に応じて筆談や音声字幕化ツールなど柔軟に対応するようにしましょう。

 

内部障害

内部障害には、障害の部位や原因によって「心臓機能障害」「呼吸器機能障害」「腎臓機能障害」「肝臓機能障害」などに分けられます。面接時に特別に配慮が必要なケースは少ないですが、事前に応募者本人に確認するとよいでしょう。面接では、症状や今後の症状の変化の見通し、業務時間内に通院の必要があるかや、服薬の状況など確認するようにします。

 

知的障害

知的障害は、程度によって「軽度知的障害」「中度知的障害」「重度知的障害「最重度知的障害」の4つに分類されます。就業を目指す知的障害者のほとんどは軽度の知的障害者です。一般的に、一度に大量の情報を処理することや抽象的な質問やニュアンスの理解が苦手です。面接では、質問の内容をできるだけシンプルに分かりやすくして、状況に応じて時間の延長などの配慮をしましょう。

 

精神障害

統合失調症やうつ病、双極性障害(躁うつ病)などの気分障害など、原因となっている障害の特性によって必要な配慮が異なります。不安が大きくなりやすいといった特徴があるため、面接では緊張感を与えないようなリラックスした雰囲気をつくることが大切です。

 

まとめ

障害者を新たに雇用する際には、入社後のミスマッチを防ぐとともに、配属や具体的な業務内容の検討、必要な配慮の把握ために、応募者の障害の種類や程度などをできるだけ詳しく知る必要があります。

 

面接試験では、まず最初に企業には安全配慮義務があり、従業員の障害の程度や困難な事、緊急時の対応などを把握する必要があるという点を説明して理解してもらいましょう。また、応募者が自身の障害について安心して話ができるように、リラックスした雰囲気で面接を進めることも大切です。

 

障害者に対して就職差別にならないような配慮は、面接時だけでなく募集から選考までの各段階で必要となります。また障害の有無に関係なく、今回の記事でご紹介したような、本籍や住所、家族、思想信条など応募者の適性や能力に直接関係のない事柄についての質問をすることは、就職差別となります。障害者を面接する際には、これらの質問してはいけない事項に十分に注意することが大切です。

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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