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障害者に対する合理的配慮とは何か?合理的配慮の進め方のポイントとは?

更新日:2020年05月13日

2016年より施行されている障害者差別解消法をご存じでしょうか。正式には「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」といいます。「障害のある人もない人もお互いにその人らしさを認め合いながら共に生きること」を目指すこの法律では、法名のとおり、障害者差別を解消することを目的としていますが、その差別解消のキーワードが「合理的配慮」という言葉です。障害者に対する合理的配慮とはどういうことなのか、また、障害者差別解消法や合理的配慮という言葉ができた背景、その普及を国が推進する背景や具体的な進め方を解説していきます。

障害者差別解消法における合理的配慮とは

2016年に施行された障害者差別解消法の目的は、「障害のある人もない人もお互いにその人らしさを認め合いながら共に生きること」。つまり障害者に対する差別のない社会の実現を目指しています。

 

しかし残念ながら、この法律が、現在はそのような社会ではないという現実を認めているということでもあります。同法では、障害者の差別解消を推進するためのポイントを二つ明確にしています。一つは「不当な差別的取扱いの禁止」と、もう一つは「合理的配慮の提供」です。

 

【不当な差別的取扱いの禁止】

「不当な差別的取扱い」とは、障害者に正当な理由なく障害を理由として差別することを指し、これを禁止しています。具体的には、正当な理由なく障害を理由としてサービスを提供しない、時間や場所の制限などを付けてはいけないということです。

 

【合理的配慮】

同法の条文によると、意味的には障害者が社会生活をする上で直面する事物、制度、慣行、観念などの障壁(バリア)を取り除く、つまり障害者が障害を持たない人と同じことができるように、障害者が対応を求めた場合、「負担が重すぎない範囲」で対応しなければならない、ということです。サービスを提供する側の「負担が重すぎない範囲」で障害者の求めに応じるということは、障害がない人と全く同じ対応ができない場合、できる範囲の配慮(工夫)をすることと、そのような対応をすることを相手に伝え了承を得ることが含まれています。

障害者権利条約の批准と合理的配慮の普及

障害者に対する全体的な合理的配慮は障害者差別解消法によって、障害者の雇用面での合理的配慮は障害者雇用促進法により定められています。2016年の同法の公布以降、各自治体から行政サービス部門及び事業者には、その通達はしっかりとおこなわれていることが各自治体のホームページなどでの取扱い(具体的な事例提供など)から推し量ることができます。

 

国はなぜ、障害者差別解消法を制定し、合理的配慮を普及させようとしているのでしょうか?そのきっかけは2006年に国連で採択された障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)にあります。

 

日本は国際社会での役割を重要視していますので、国連の人権関連の条約などには基本的には同意、批准しています。過去にも、1979年の女性差別撤廃条約や1989年の児童権利条約など、批准するたびに国内の関係法が整備され、女性の地位や児童の人権は向上してきました。

 

今回の障害者差別解消法の二本の柱である「不当な差別的取扱いの禁止」および「合理的配慮」の提供も日本の独自のものではなく、その啓蒙、普及までも障害者権利宣言の条文に盛り込まれているものです。つまり、これらは条約批准の際の約束事といってよいでしょう。

 

ここ数年の合理的配慮を含む障害者の人権向上推進の動きの背景には、障害者権利条約の批准が大きな役割を果たしています。

配慮が合理的であるということは

障害者差別解消法及び関連法制度における合理的配慮の考え方は、基盤となる障害者権利条約の第2条に記載されている定義をそのまま用いています。

 

障害者権利条約の第2条では、合理的配慮を「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」としています。

 

「必要かつ適当」というのは、社会的障壁の除去が必要であるという意思の表明が障害者からあった場合、利用者へのサービス提供や労働者としての受け入れに何らかの配慮(変更や調整)が必要であるということ、そしてその配慮がその場面、状況において個別の障害特性に応じて適切なものである必要があるという意味です。

 

【過度な負担でないこと】

「合理的」の意味にはサービスを提供する側や雇用する側と障害者の相互に合理的であることと捉えられます。一方的に障害者側の要求がそのまま受け入れられる訳ではないのです。それは一般的な店と客との関係と同様、客側の一方的な無理難題に応じるのではありません。障害者権利条約第2条にある通り、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」という程度に制限されています。

 

障害者差別解消法の基本方針においては、「以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要」とされています。

 

・事務・事業への影響の程度(事務・事業の内容・目的・機能を損なうか否か)
・実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
・費用・負担の程度
・事務・事業規模
・財政・財務状況

 

これらの要素を鑑みて、「過度な負担」がある場合、「配慮ができない」という判断ができます。その場合、配慮を求めている障害者に対して、判断の根拠を説明し、理解を得る義務があります。またできる限りの代案の選択肢も事業所内で検討し提案できることが望まれます

行政機関・事業所の義務と罰則

障害者差別解消法において、合理的配慮を提供する側になるのは行政機関(国及び地方自治体)と事業者ですが、その義務においては一律ではありません。

 

【行政機関等においては義務】
国の行政機関(主に各省庁のこと)、独立行政法人等、地方公共団体、地方独立行政法人においては合理的配慮の提供は義務となっています。

 

【事業者においては努力義務】
商業その他の事業をおこなう者については努力義務となっています。

 

【合理的配慮がなされない場合は勧告・指導】
障害を理由とする差別的取扱いは、行政機関においても、事業所においても撤廃することが義務であり、法律違反となります。

 

一方、合理的配慮の提供については、行政機関では義務、事業所ではサービスの対象者に対しては努力義務と定められています。違反した場合、直接的な罰則はなく、障害者差別解消支援地域協議会における守秘義務違反と、対応指針に関する主務大臣への報告の際の虚偽について罰則が定められています。つまり、違反状態に対しては罰則ではなく指導・勧告が入るということです。

 

また、平成28年に改正された障害者雇用促進法において、事業主として障害のある労働者に合理的配慮を提供することは義務であることが明確に記されました。こちらも義務違反について罰則はなく、指導・勧告が行われます。罰則よりもその合理的配慮がなされるよう改善をさせることが重要と捉えてのことです

合理的配慮の進め方

ここでは実際に合理的配慮を実施する際のプロセス(過程)を4つのポイントに分けてご紹介します。

 

①当該障害者からの申し出

事業所におけるサービス提供の場面、教育現場、事業主と被雇用者といういずれの関係においても、当該障害者から合理的配慮を求める申し出があることから始まります。雇用の募集・採用の場合、当該障害者からの合理的配慮の申し出は面接日までに時間の余裕をもっておこなわれることが求められます。

 

②配慮内容についての話し合い

当該障害者がどのような合理的配慮を求めているのかを踏まえ、求められている側がそれを受けてどのような措置(対応)を取れるのかを話し合います。

 

障害者側から具体的な対応が提示されない場合は、または求められている側にとって過度な負担となる場合は実施できる対応の選択肢を提示し、相互に納得できる対応について合意にいたるまで話し合います。

 

③合理的配慮の確定・実施

当該障害者の求める合理的配慮について、合理的配慮を求められている側に過度な負担となるため対応ができない場合は、なぜできないのか根拠を示して説明し、合理的配慮を求められている側ができる対応を提示した上で話し合い、対応について確定します。確定後に合理的配慮を実施します。

 

④合理的配慮のモニタリングと評価

継続利用するようなサービス、または就労の場合は合理的配慮を実施しつつ、経過をモニタリングし、当該障害者と定期的に内容を評価し、必要であれば変更や改善を加えながら合理的配慮の提供を続けていきます。

就労における合理的配慮

【採用・応募時の合理的配慮について】

就労に関わる合理的配慮は、障害者雇用促進法によって定められています。

採用・応募時には当該障害者からの申し出により合理的配慮のプロセスが開始する一方、採用後は事業主が合理的配慮の実施・必要性の有無についての確認が必要なことに留意する必要があります

採用・応募の際に求められる合理的配慮は、当人の障害の特性により様々です。

 

具体的には、

・募集内容について音声等でも提供する

・採用試験を音声や点字で実施する

・試験時間を延長して実施する

・就労支援機関の職員の同席を許可する

・面接時などの筆談対応

・移動を極力少なくするような工夫

 

など、個々の障害特性に応じた配慮が必要です。

 

【採用後の合理的配慮について】

採用後の合理的配慮は主に作業・職場環境に関して求められる場合が多くあります。

 

原則として、どのような障害を持つ従業員に対しても

 

・業務指導

・相談を受ける担当者を定めること

・通院や体調面を踏まえた出退勤時間の配慮

・こまめな休憩・休暇への配慮

・他の従業員に障害の内容や必要な配慮について周知するなどの配慮

 

などを検討する必要があります。

 

 

その他、個々の障害の特性に応じて、

 

・勤務スペースの動線上の障害物を撤去する

・スロープや手すりなどを設置し職場での移動の安全を確保する

・拡大画面での表示

・メールやチャットを用いた業務指示

・わかりやすい作業マニュアルの作成

・施設や設備の案内板の設置

 

など、コミュニケーションや職務を円滑にするための工夫などの配慮が考えられます。

 

また、福利厚生(主に法定外福利厚生)や研修においても障害があることが理由で利用、参加できないことがあってはいけません。必要な配慮について事前に話し合うのがよいでしょう。

「合理的配慮」が特別な言葉ではない社会へ

エド・ロバーツという人物をご存じでしょうか?

 

1960年代にアメリカで自立生活運動を広めた重度の身体障害者です。

 

今でもアメリカの自立生活運動の聖地であり中心であるカルフォルニア大学バークレー校に入学し、大学構内と周辺地域の障害者にとってのアクセシビリティの向上や大学の障害者に対する保護的なシステムや姿勢を改革した人物です。

 

自立生活運動とは、「自分のことは自分で決める」ということ、障害者自身が社会の保護主義に依存せず自立生活運動できる能力を獲得すること、地域社会で自立した生活をすることが核となっています。この自立生活運動の波は世界に広がり、日本でも1970年代に入って運動が展開されました。

 

当事者である障害者がどうしたいのか、周囲にどうしてほしいのかについての自己決定、自己選択を尊重するという考え方はこのころから欧米では根付き、アメリカではリハビリテーション法やADA法(障害を持つアメリカ人法)へと繋がっていきました。「合理的配慮」という言葉はこのころからあるのです。

 

それから半世紀ほど経ち、障害者の自立生活や合理的配慮を求める運動は再度日本で勢いを得ようとしています。多様性を認め合う共生社会においては、相互理解が大切です。そのためにはマイノリティから社会全体への存在や要望の発信があり、社会全体がそれをどう反映させるかを考える必要があります。今、ようやくその土台が日本において形成されつつあると言えます。

 

本来、合理的配慮はごく自然に実践されるべきものです。

相互に相手の個性を理解し、尊重しあえる社会では合理的配慮という言葉は無用と言えます。その実現には国、地方自治体、当事者、全ての国民の正しい人権理解への協力が必要です。

 

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atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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