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障害者差別解消法とは?その概要と「合理的配慮の提供」について解説

更新日:2020年01月09日

障害者差別解消法は正式な法律名を「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」といい、2013年に公布され、2016年に施行されたまだ新しい法律です。この法律は障害者の不当な差別的取扱いを禁止するものです。ここでは障害者差別解消法の概要と同法における「不当な差別的取扱い」、そして「合理的配慮の提供」とはどういうことなのか、詳しく解説していきます。

障害者差別解消法制定の背景

多くの法制度の制定や改正にはその起因となる社会の動向があります。福祉法制度も同様です。残念ではありますが、日本では女性、児童、高齢者、障害者といったいわゆる社会的弱者の人権擁護、向上のための施策は能動的に生み出されることは少ないのです。例えば、日本の児童福祉関連施策の改善には国連での「子どもの権利条約」の採択(1989年)が大きく影響しています。この障害者差別解消法の制定にもその背景は当然あります。それは2006年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」です。日本政府はこの条約を2013年に批准していますが、これは条約に沿うように国内法の整備をするのに7年かけたということです。この間に行なった整備というのが、障害者福祉施策の根幹となる障害者基本法の改正、障害者差別解消法の制定、障害者雇用促進法の改正などです。特に障害者基本法の改正では、障害者の定義が改訂され、従来の身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者以外にも、その他の心身の機能に障害がある者で継続的に社会的障壁によって日常生活や社会生活に制限を受ける者と範囲を拡大し(障害者手帳の有無に関係なく)、機能モデルから社会モデルへと変更している点は画期的です。

 

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障害者差別解消法の目的

この法律は障害者基本法の基本的な理念にのっとり障害を持つ人が障害を持たない人同様に基本的人権を持つ個人としてその尊厳が重んじられ、それにふさわしい生活をする権利があることを前提に、障害を理由とする社会におけるあらゆる差別(社会的障壁)の解消を推進するものです。具体的には行政機関や事業者が障害者に対して障害を理由に不当な差別的取扱いがない対応を求めており、これにより国民が障害の有無によって分け隔てられることなく共生できる社会を目指すとしています。具体的には”不当な差別的取扱いの禁止”、”合理的配慮の提供”、そしてそれらに関する”国による啓発、知識の普及を図るための取組”を推進することです。

 

冒頭に”障害者基本法の基本的理念にのっとり”とありますので、同法の第3条の基本的理念をご紹介しますと、「すべて障害者は個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。2.すべて障害者は社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。」とあります。この障害者基本法は文字通り、障害者関連法制度の基本的事項を定めたもので、同法の基本的理念は日本の障害福祉施策全ての基本的理念といってもいいものです。障害者基本法は1970年(1972年施行)に公布されており、当時は心身障害者対策基本法という名称でした。同法が障害者基本法に改正され、この基本理念が追加されたのは1993年のことです。そこには障害者は他の国民同様の基本的人権があり、等しく社会参加の機会が与えられる存在であること、そしてそのために障害者が自立し、社会参加できるための支援を国が計画的に推進することが明記されています。心身障害者対策基本法の改正の背景には1980年代の「国連・障害者の10年」などの国際的な障害者の人権擁護・保障のムーブメントがあり、日本もその流れに乗った部分があります。今回の「障害者の権利に関する条約」に沿った障害者差別解消法の制定を含む一連の法制度の整備は、国際的な障害者の人権観を基礎に置いたものと言えるでしょう。

障害者差別解消法における”不当な差別的取扱い”とは

この障害者差別解消法では障害者への”不当な差別的取扱い”を禁止しています。”不当な差別的取扱い”とは、障害者に対して、障害があることを理由にサービス提供を拒否したり、本来のサービス提供の場所や時間を制限を課したり、障害がない人へのサービス提供時にはしない条件を付けたりすることです。内閣府の障害者差別解消法の広報パンフレットによりますと、”不当な差別的取扱い”の具体例としては、サービスの提供者が障害者である対象者に対して受付の対応を拒否する、本人がその場にいるのに本人を無視して介助者や支援者にのみ話しかける、学校などの教育機関において受験や入学を拒否する、不動産業などにおいて障害者向け物件がないとという理由で対応しない、飲食店などの店舗で障害者は保護者や介助者が同伴しないと入れないという条件を付けるなどを挙げています。これら以外にも同法施行後、具体例として挙げられるのが視覚障害者の盲導犬、身体障害者の介助犬同伴、あるいは車いす等での入店拒否、公共交通機関等での乗車拒否は原則的に”不当な差別的取扱い”となります。

 

また、学校などの教育機関、事業所での雇用、労働に関しても以下のような事例は”不当な差別的取扱い”となります。学校教育において、本人や保護者が希望しないのに地域の小中学校ではなく特別支援学校や特別支援学級に入ることを強いられる、授業や行事に参加できず別メニュー(見学を含む)になる、保護者の同伴を求められるなど。雇用、労働の面では、障害があることを理由に採用面接・試験や雇用をしない、給与、昇進等に差をつけるなど。例えば視覚障害があるため、採用試験の記述式試験が受けられない、車いすを利用の理由に採用しないなどは”不当な差別的取扱い”になり、これらについては障害者差別解消法とは別に障害者雇用促進法に明記されています。また、不当ではなく、正当な理由があると判断する場合は障害を持つ当事者や保護者にその理由を説明し、理解を求めるよう務めることが求められています。

障害者差別解消法における”合理的配慮”について

障害者差別解消法では障害者が社会的障壁(バリア)を理由とした何らかの対応を求められた場合、”負担が重すぎない範囲”で対応することを求めています。この場合、行政機関(国、自治体などの役所)では対応をすることは義務であり、事業所は対応に務めること(努力義務)となっています。”負担が重すぎない範囲”とは、例えば混雑した従業員が少ない店において、車いすで入店した障害者が介助を求めた場合、可能であれば介助をし、それができない場合、別の方法で対応することが想定されています。当然、合理的配慮は障害特性やその時の場面や状況で変わってきます。この”負担が重すぎない範囲”という表現が入ることで、合理的配慮というのは必ずしも行政機関や事業者が障害者の求めるとおりの配慮を行うことではなく、事業者の規模や従業員数、状況に合わせて柔軟な対応をすることと受け取ることができます。障害者にとっては障害を理由にサービスの利用を断られることは人権侵害、不条理であり、事業者にとっては事業の重荷になるような身の丈に合わない要望に沿うことはできません。そういう意味では、”合理的配慮”というのは相互合に理的である配慮とも言えます。

 

内閣府のパンフレットでは合理的配慮の具体例として以下を挙げています。障害者の特性に応じて席を決める、書類の記入ができない障害者に対して、代筆が可能な書類については相手の意思を十分に確認して代筆する、意志の伝達をするのに絵カードや写真、タブレット端末を利用する、段差がある場合にスロープ(折りたたみ式やポータブルなど)を使って補助をするなどです。最初の障害特性に応じて席を決める場合、視覚・聴覚障害者であれば、席を前にする、人混みが苦手な障害特性であれば席を端の方にする、生理現象などが理由で頻繁に室外に出る場合は席を出入口の近くにするなどが考えられます。また学校や障害者を雇用する事業所では各種障害特性に応じて手話通訳者や要約筆記者、介助者を置く、仕事に必要な道具や教材、施設、設備について適切な工夫をするなどが含まれます。

国・地方公共団体と事業所の対応

次にすでに少し触れた部分もありますが、ここで国・地方公共団体と事業所の対応についてご紹介します。まず、国・地方公共団体(役所)においては職員が不当な差別的取扱いや合理的配慮を正しく理解し対応するための「対応要領」というマニュアルを当事者である障害者や関係者の意見を反映させて作成することになっています。国の場合は義務、地方公共団体は努力義務とされています。また各種会社やお店が正しく不当な差別的取扱いや合理的配慮を理解し、障害者差別解消に取り組めるように、事業を所管する省庁は「対応指針」の策定が義務付けられています。各事業者はこの「対応指針」を参考にして対応することとなっており、各省庁の主務大臣は事業者に報告を求め、助言、指導、勧告を行なうことができます。

 

この障害者差別解消法の核となる、”不当な差別的取扱いの禁止(障害を理由とする差別の禁止)”への措置を取ることについては、国・地方公共団体、民間事業者ともに義務(法的義務)であり、”合理的配慮の不提供の禁止”への措置を取ることについては、国・地方公共団体は義務、民間事業者に関しては努力義務となっています。また国・地方公共団体は差別を解消するための支援措置として、紛争解決・相談体制の整備、障害者差別解消支援地域協議会の設置、啓蒙活動、国内外の障害者差別解消に必要な情報収集をすることが求められています。

 

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障害者雇用については、「障害者雇用促進法」という法律で義務付けられていますが、障害者雇用促進法には、他にも障害者差別の禁止や合理的配慮の提供の義務などが定められています。

障害者雇用にまつわるメリット・デメリットをはじめ、最低限知っておきたい基礎知識をご紹介します。

 

この資料でわかること
・障害者雇用とは?
・障害者を雇用するメリット
・障害者を雇用しないデメリット
・障害者雇用が進まない企業が抱える課題
・課題を解消するポイント
・押さえておくべき障害者雇用の法律・制度

 

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▼サンプル

障害者差別解消法のまとめと課題

2013年に公布された障害者差別解消法は2006年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約」の内容を反映して制定されています。この「障害者の権利に関する条約」はそもそも制定の過程に当事者である障害者団体が参加し、その意見がよく反映されています。”Nothing about us without us” とは、「私たちなしに私たちのことを決めるな」という意味で、非常に国際的に有名なフレーズとなりました。逆に言うと、”障害を理由とする差別的取扱いの禁止”や”合理的配慮”という言葉は日本国内で、あるいは日本政府が自発的に生み出した言葉や考えではないのです。そういう意味では、過去の歴史を振り返っても、人権保障のムーブメントとは日本国内で自然とは起こらないという現状が見えてきます。日本は欧米と違い、民主義的人権保障の点ではいつまで経っても欧米に追従するだけの後進国と言えます。また、障害者差別解消法では行政機関よりもより身近な社会参加の場である民間事業者の合理的配慮が努力義務となっている点で障害者の人権保障よりも事業者の利益が優先されたとも考えられます。また、障害者の差別解消のもっとも大きな障壁は行政機関や民間事業者よりも障害を持たない個人や集団の人権への理解が十分でないことに起因しています。障害者や女性、児童、在日外国人の人権問題の解決はもっと基本的な人権教育や啓蒙が大切なのです。


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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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