突然走り出すことと関連のある障害について|大人のADHDの症状
更新日:2025年12月19日

突然走り出す行動は、子どもの「 ADHD(注意欠如・多動症)」では一般的な症状です。大人の「 ADHD(注意欠如・多動症)」でも、多動性・衝動性の特性が原因で、感情のコントロールができなかったり、思いついたことをすぐ行動に移してしまったりといった形で現れることがあります。 本記事では、大人の「 ADHD(注意欠如・多動症)」の症状や生活面の困りごとなどについて紹介します。
目次
「ADHD(注意欠如・多動症)」とは
発達障害は、脳の働きに偏りがあって、行動やコミュニケーション、注意力、感覚などに特性が現れる障害の総称です。発達障害者支援法では、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、ADHD(注意欠如・多動症)、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義しています。
このうち「 ADHD(注意欠如・多動症)」は、不注意と多動性・衝動性の特性が現れる発達障害です。特性は不注意と多動性・衝動性の両方がある場合と、どちらか一方が顕著に現れる場合があります。
ADHD発症率の男女差
日本では、「 ADHD(注意欠如・多動症)」の発症率について詳しいデータがありませんが、アメリカでは5%、イギリスではおよそ3%だと言われています。
男女差では男児に多く、男児では女児の2倍から3倍の発症率と報告されています。これは、男児では多動性や衝動性の症状が優勢に出るため発見されやすく、女児は不注意の症状が優勢に出るものの大きなトラブルになることが少なく大人になるまで気づかないからと考えられています。
「ADHD(注意欠如・多動症)」の症状
「 ADHD(注意欠如・多動症)」の症状には次のようなものがあります。
子どもによく見られる症状
発達障害の症状は、一般的に2~3歳になると現れると言われています。ただし、個人差が大きく、思春期になるまで気づかれないケースもあります。

大人の女性によく見られる症状
人によって違いがありますが、大人の ADHD(注意欠如・多動症)を持つ女性に見られる主な症状には次のようなものがあげられます。

大人の男性によく見られる症状
大人の男性のADHD(注意欠如・多動症)は、多動性や衝動性が強く現れる傾向があります。衝動的な行動は、職場でのトラブルや人間関係の摩擦を引き起こすこともあります。

ADHDの大人が生活面で困ること
大人の「 ADHD(注意欠如・多動症)」の方たちは、前章で紹介した症状によって、生活面ではいろいろな困りごとがあります。個人によって症状も困りごとも違いますが、代表的なものを紹介します。
ADHDの女性が困ること
大人の「 ADHD(注意欠如・多動症)」で女性の場合には、社会的な期待や役割と自身の特性とのギャップに悩んで、さまざまな困りごとを抱えやすい傾向があります。
● 感情のコントロールが難しい
感情の起伏が激しく、些細な事に過剰に反応してしまったり、感情が収まるまでに時間がかかったりすることがあります。そして、後から冷静になり後悔することが多くあります。
また、整理して順序立てて話すのが苦手だったり、感情的になって話をしてしまうことで、相手に意図がうまく伝わらないことや、相手にきつい印象を与えてしまうことがあります。
● 相手の気持ちを読み取るのが苦手
相手の表情や声のトーンなどから、感情や意図を読み取ることが苦手な場合があります。
そのため、言葉通りの意味でしか受け取れず、相手が遠回しに伝えていることや、皮肉などが理解できないことがあります。
● 周りに合わせ過ぎて疲弊する
「 ADHD(注意欠如・多動症)」の女性は、周囲の期待に応えようと無理をして、疲弊してしまうことがあります。周りに迷惑をかけたり、浮かないようにと過度に気を遣ってしまい、精神的に疲れてしまうことがあります。
● 仕事や家事、金銭管理が難しい
「 ADHD(注意欠如・多動症)」の症状である不注意は、仕事や家庭生活に直接的な影響を与えます。
仕事では、ケアレスミスの多さや時間管理の苦手さから、業務の進行に支障をきたしてしまうことがあります。また、日常生活では掃除や洗濯、料理といった家事を計画的にこなすのが難しく、家の中が散らかったり、衛生状態が悪化したりすることがあります。お金の流れを把握するのが苦手という悩みもよくあります。
ADHDの男性が困ること
大人の「 ADHD(注意欠如・多動症)」の男性は、仕事だけでなく家庭やプライベートなど、さまざまな場面で困難を感じる傾向があります。
● 集中力維持の難しさやケアレスミス
仕事では、データ入力やチェック作業など、繰り返しの作業や地道な作業で注意力が散漫になりやすくミスを連発してしまうことがあります。また、マルチタスクが苦手で、複数の仕事を同時に抱えると、パニックになったりどれも中途半端になったりします。
● 時間管理の難しさや遅刻、期日忘れ
時間管理やスケジュール調整が苦手なため、仕事が締め切りギリギリになったり、間に合わなくなったりすることがあります。また、複数の仕事を抱えた場合、優先順位を付けることができず、効率的に作業を進められません。
● コミュニケーションの課題
「 ADHD(注意欠如・多動症)」の方には、不注意や衝動性・多動性といった症状に関連してコミュニケーションに課題を持つ方が少なくありません。
そのため自分の意図がうまく伝わらなかったり、相手の真意を誤解したりすることがあります。また、感情コントロールが難しいため意見の違いから、場合によっては口論に発展してしまうこともあります。
ADHDの診断
「 ADHD(注意欠如・多動症)」の診断は、アメリカ精神医学会によって作成された精神疾患の診断基準と統計マニュアル「DSM-5」に沿って行われます。診断基準は以下の通りです。

ADHDの治療
「 ADHD(注意欠如・多動症)」の治療法には、次のようなものがあります。
薬物療法
注意力、集中力、感情のコントロールには、脳内のドパミンやノルアドレナリンという神経伝達物質が関与しています。「 ADHD(注意欠如・多動症)」は、これらの分泌の不具合により起こると考えられていて、分泌を改善させる薬が治療に使われます。ただし、薬物療法は、ADHDの症状を改善するのではなく、あくまで一定時間症状を抑えるためのものです。
認知行動療法
「認知行動療法」は、物事の考え方やとらえ方、それに基づく行動の偏りについて考えて、つらい気持ちやストレスを減らしていき、感情のコントロールを促す心理療法です。「 ADHD(注意欠如・多動症)」の方に行われる認知行動療法には、次のようなものがあります。
● 注意持続訓練:物事に集中できるようにするための訓練
● 対人スキル訓練:周囲の人とどのように関係を構築していけば良いか・受け答えをどのようにすべきかの訓練
● 感情コントロール:怒りっぽい症状が出ている人を対象とする「アンガーマネジメント」の訓練
● 時間管理訓練:スケジュールの把握・調整ができるようにするための訓練
ADHDの二次障害
「 ADHD(注意欠如・多動症)」の症状は、日常生活や仕事においてさまざまな困難を引き起こします。それに加え「 ADHD(注意欠如・多動症)」の症状を抱えながら日常生活を送ることによって、心理的な傷つきや精神的な不調を抱えて、それが日常生活の支障となることもあります。これらを「二次障害」といいます。
「二次障害」は、具体的に次のような症状がみられます。
● 体の不調:頭痛、食欲不振、不眠など
● 精神面の不調:過剰な不安や緊張、抑うつ気分、社交不安(対人恐怖)、不登校、
引きこもりなど
● 行動面の問題:強い反抗、暴言・暴力など
よくある質問

ADHDの方の就職転職の悩み
「ADHD(注意欠如・多動症)」の方は、その症状が原因で職場でさまざまな困難を抱えることがあります。また、自分に合った仕事や働き方がわからない、どこに相談したら良いかわからないといった悩みを持つ方も少なくありません。
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まとめ
「 ADHD(注意欠如・多動症)」は子どもだけではなく、大人にも見られる発達障害です。子どもの頃に、正しく診断されてこなかったことから、大人になってから「 ADHD(注意欠如・多動症)」がわかるケースも多くあります。
記事でご紹介した「 ADHD(注意欠如・多動症)」の症状や困りごとに当てはまる項目が多い場合は、精神科や心療内科などの専門医に相談してみましょう。






