障がい者(障害者)の求人転職情報・雇用支援サービス

お仕事ノウハウ

ADHDがある方にもできるタスク管理の方法について詳しく解説

更新日:2022年08月29日

ADHD(注意欠如・多動症)は自閉スペクトラム症などの広汎性発達障害やLD(学習障害)と並ぶ発達障害の一つです。2018年の厚生労働省の調査では全国で発達障害の診断を受けている人の数は約48万人で、残念ながら詳細な内訳は不明ですが、この48万人のうちの相当数がADHDであることが推察されます。また日本の学齢期の児童の有病率は3~7%程度であると考えられています。ADHDは通常、学齢期までに発症します。生活習慣の改善により症状が緩和するという研究もありますが、成人後もその症状が学業や仕事に大きく影響しているというケースも多いのです。今回はそんなADHDがある方のタスクやスケジュール管理の方法について詳しくご紹介していきます。仕事が効率よくできないとお悩みの方は是非参考にしてみてください。
 

ADHDとは

ADHDは発達障害の一つで脳内物質であるドーパミンの機能障害や遺伝が関係しているとされる先天的な脳機能の障害です。

精神疾患の国際的な診断基準となっているアメリカ精神医学会のDSM‐5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)によりますとADHD(成人)の診断基準は以下のとおりです。

 

1.不注意、多動、衝動性が同じ程度の発達レベルとは一致しないほど頻繁で強い

2.その症状のいくつかは12歳までにみられる

3.家庭、学校、職場、その他の活動などの二つ以上の状況で障害となっている

4.症状が社会的、職業的、学業的に機能する上で明らかな妨げとなっている

5.統合失調症やその他の精神病の過程で生じたものではなく、またこれら以外の精神疾患でも説明がつかない

ADHDの特性

【不注意】忘れ物やミスが多く、確認作業が苦手

 具体例:仕事や日常生活でのミスが多い、仕事の優先順位を考えたり計画を立てることが苦手、仕事を先延ばしにしたりする、落とし物や忘れ物が多い、スケジュール管理ができない(約束を忘れる、遅刻が多い)など

 

【多動性・衝動性】 落ち着きがない、気が散りやすい

 具体例:じっとしていられず、常に身体を動かしている(顔を触る、貧乏ゆすりなど)、静かにすることが苦手、自分が話したいことを一方的に話をしてしまう、失言をしてしまう、他者から見て場を乱すような、空気の読めない行動をとるなど

 

これらの行動に対する周囲の対応の仕方によっては、つまり失敗したことを責められるような経験を重ねていると、失敗するのではないかという不安を持ったり、失敗に極度に落ち込んだり、他者との関わりに臆病になってしまう人もいます。

ADHDのある方がタスク管理やスケジュール管理が難しいのは何故?

優先順位をつけるのが苦手

複数のタスクを課せられた場合、何が大事で、どれから始めるか、何を最初に終わらせるべきか、物事を整理して優先順位をつけるのが苦手です。他者に言われると何が大事なのか理解できることもありますが、時間がたつと忘れてしまうこともあります。

 

新しいものや興味のあるものに目移りしてしまう

衝動性の特性から、新しいタスクや他のことに目移りしてしまう、または集中しすぎてしまうことがあります。やらなければならないタスクを理解し、それに取り組むことができますが、自分の中での興味や、気を引くものに対して自分をコントロールするのが難しく、タスクの遂行に長く集中力がもちません。逆に自分が興味のあるものだと、しなければならないタスクよりもそれを優先して取り組んでしまいます。

 

タスクやスケジュールを忘れてしまう

このように自分が興味のあることに集中してしまうので、やるべきタスクやスケジュールを忘れてしまいます。上司や同僚がタスクの確認をするとそれを認識していたり、認識し直すことはできますが、その後、一人になったり、時間が経過すると自分のやりたいことに集中してしまい、実際は全然取り組んでいなかったり、忘れてしまっていることがよくみられます。

 

時間管理が苦手

衝動的に行動する特性から時間の管理も苦手です。特に単独で行動する場合、上述したように自分の興味のあるものに惹かれて集中してしまうため、決められた時間までにタスクをこなすことや、目的地に着くことが難しいのです。自宅でもゲームを延々としていたり、会社や訪問先に行く途中で興味を惹かれるものがあると寄り道をしてしまうことがあります。

 

また、多動性があり集中力が続かないことから、なにかタスクをしている途中でも落ち着かず、頻繁に席を立ったり、歩き回ったり、座っていても作業をしていない時間が多かったりします。

タスク管理をすることのメリット

タスクの漏れを減らせる

タスクを管理することは実際に働いている人は誰でも何らかの形でしているものです。わかりやすい例で言うと、会社などの重役等につく秘書であったり、芸能人のマネージャーという人たちはタスク管理のための人員といえるでしょう。

 

もちろん、そういうタスク管理に専任の係をつけることは一般的ではありませんので、多くの人は個人でタスク管理をしています。

 

その方法は次項で説明しますが、タスク管理することでやるべき仕事を漏らさずに行うことができるのです。

 

スケジュール管理がしやすくなる

また、タスク管理をするということは、タスクを遂行するのにかかる時間や、仕上げるべき時間、複数のタスクがある場合にはそのタスクの優先順位などが明確になりますので、スケジュール管理がしやすくなります。

 

仕事の効率化につながる

このようにタスクとそれを行なうためのスケジュールが明確になると、当然ながら仕事の効率は格段によくなります。仕事効率がよくなるということは、タスクを行う際にそのタスクが適切に行われ、またスケジュールが守られることによってタスクの納期や自分自身の労働時間が守られるというメリットがあります。

 

「どうやって仕事を探せばいいんだろう・・」そんなあなたには簡単1分でタイプ別にわかる!仕事の探し方診断がおすすめです。

→【LINEおともだち追加】で診断してみる

タスク管理のポイント

ToDoリストを作る

ToDoリストというのは、簡単に言うと、タスクとスケジュール管理の台帳です。昔からビジネスパーソンの間では手帳を使って行われてきた方法です。実際はどのような媒体でもかまいません。

 

日本ではまだ中高年の多くが手帳を使っているという現状がありますが、IT関連企業や比較的若い世代ではスマートフォンやパソコンのアプリ、いわゆるツールを使ってToDoリストを作成しています。

 

もちろん、本人が使いやすければ、手帳やメモ帳、オフィスワークや決まった場所でするような仕事であれば、デスクや壁に手書きや印刷した紙を貼っておく、黒板やホワイトボードに書くなどやり方はさまざまです。ただし、ToDoリストはいつでも確認できる場所を決めておくことが大切です。ツールの場合はすぐに確認できるようにブックマークしておく、紙の場合はデスクの引き出しや目につく場所に置いておくのがよいでしょう。

 

タスクを細分化する

ToDoリストにタスクを記入する場合はできるだけタスクを細分化してやるべきことを具体的にしておくことをおすすめします。任されたタスクを詳細に書きだす、あるいはツールに入力するのですが、一つのタスクに必要な行動や作業が複数ある場合は省略せず一つ一つの行動や作業を文章にします。

 

以下の仮想タスクを元に一つのタスクを詳細に書き出してみました。

 

タスク例:指定された取引先に商品を納品する

開始日時:〇月✖日13:00

終了予定日時:〇月✖日14:00

所用時間:約60分

【タスク作業工程】

①出荷部に行って商品を必要個数もらう

②受け取った商品を段ボールに入れる

③納入先が複数ある場合は段ボールを納入先の数だけもらう

④納入先が複数ある場合は注文された個数を確認して段ボールに分ける

⑤段ボールにタグシールを貼り納入先を記入する

⑥段ボールを営業車に積み込む

⑦営業車のナビゲーションの登録リストから該当する取引先を選び出発する

⑧目的の取引先に着いたら駐車場に止める

⑨段ボールのタグシールを確認し、担当部署(担当者)に渡す

⑩会社に戻る

 

優先順位と所要時間を把握

タスクが複数ある場合、どのタスクが重要か、またいつまでに終わらせるべきなのかによって優先順位をつけるようにします。 優先順位が分からない場合は上司や周りの人達に確認します。

 

また、タスクが完了するまでの所要時間を日常的にメモしておくと、時間が把握しやすくなります。

 

アラームをセットする

他のことに気が散りやすかったり、集中しすぎてしまう場合は、タスクごとにアラームをセットするようにします。

メモ帳を常に持ち歩く

いつでもどこでもタスクやスケジュールを確認できるようにタスク管理用の手帳やメモ帳を持ち歩きましょう。タスクについての情報をすぐに書き込めるようにするためです。重要なタスクや注意点が、後でもわかるように色付きの付箋やマーカーを活用するのがよいでしょう。

 

スマートフォンなどのツールが利用できる場合は、自身が楽であればツールのメモ機能でもよいでしょう。できるだけタスクについて聞いた時点でメモを取る癖をつけないと、ADHDの特性上、忘れてしまうことが多くなります。

 

その時その時、違うツールやアプリを使ってタスクを入力してしまうというようなこともADHDではあり得ますので、タスク管理ツールは一つにまとめておくように注意します。

 

整理整頓するだけの時間を作る

タスクに追われているうちに収拾がつかなくなるといったことを防ぐために、一度落ち着いてタスクを見直し、整理整頓時間を作るようにします。

まとめ

ADHDがある方は、その特性上、仕事上のタスクを問題なく実行するには困難が生じます。多くのADHDがあることの困りごととしては、落ち着きがなく、他のことに気を取られてしまうことが多くタスクに集中できない、タスクやスケジュールそのものを忘れてしまう、遅刻が多い、タスクが時間内に終わらないなど時間の管理ができないなどさまざまです。

 

タスクを遂行する上で、特にそういう問題を抱えていない社会人の多くが何らかの形でやっているタスク管理は、当然ADHDがある方にもとても有効で、うまくタスク管理ができれば仕事の効率化が図られ、職場にも評価され、自分自身も時間的にも精神的にも楽になるものです。是非自分に合ったタスク管理に挑戦してみてはいかがでしょうか。

atGPエージェント

アバター画像

ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

このライターの記事一覧を見る

注目記事PICK UP!

対象から記事を探す

公式SNSはこちら

会員登録 無料

atGPトップ
各種サービス
求人を検索する 求人を紹介してもらう スカウトを受ける 就労支援サービス 就職・転職ノウハウ
お問い合わせ・よくある質問
お問い合わせ よくある質問