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重症筋無力症とはどんな障害なのか?~重症筋無力症と向いている仕事について

更新日:2021年03月15日

国に指定されている”難病”という病気があります。難病とはおおむね、「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいう」と定義され、2014年に交付された、難病法(正式には難病の患者に対する医療等に関する法律)により総合的な支援が定められています。このうち、医療費の助成等がなされる指定難病には2021年現在で、300以上の疾患が指定されており、今回取り上げている重症筋無力症もその一つです。重症筋無力症ついては詳しくは後述しますが、筋肉を動かそうするときに放出される脳からの伝達物質が自己免疫により妨げられ、筋肉が疲れやすかったり、麻痺するという困難な病気です。指定難病である重症筋無力症とはどのような疾患なのか、そして重症筋無力症の患者が働く場合、どのような仕事が向いているかなどについて詳しく言及していきます。

重症筋無力症とは

重症筋無力症は国(厚生労働省)に指定される指定難病の一つです。

指定難病とは「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいう。」(難病法)に加えてにさらに、「患者数が国内で一定数(現在の基準18万人・人口の0.142%未満)に達しない」、「客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している」、難病の中でも特に重症と認定されるものを指しています。

 

重症筋無力症は略称、MG(エム・ジー:Myasthesia gravis)とも呼ばれます。

脳からの筋肉を動かす指令を伝達する伝達物質が、筋肉側の脳からの信号を受ける受容体という部分で自己抗体によって妨げられることによって発症します。言わば、自己免疫の誤作動で、免疫性神経疾患の一つです。運動、動作の反復により筋力が低下し、休むことで改善します。

 

ちなみに”重症”とは、重力により筋肉が垂れ下がるといった意味合いとなっています。主に夕方以降に症状が変動する日内変動、そして日によって症状が変わる日差変動が見られ、初期にはまぶたや眼球の動きに症状が現れます。

 

全国調査では1980年代では10万人に対して5.1人、2000年初頭では同じく11.8人と倍増し、現在では国内の患者数は2万人を超えていると推測されています。男女比では、男性よりも女性の方が約1.7倍も多く、年齢別では、男女ともに10歳以下、そして男性は50代、女性は30代に発症のピークがあるという結果も出ています。現在では適切な治療により発症した人の約半数は元の生活に戻ることができるようです。

 

 

重症筋無力症の主な症状

全身の症状(全身型)

全身型は重症筋無力症のうち、球症状、呼吸症状、手足の症状など、全身において症状が見られる型のことです。全身型の各症状は以下のとおりです。

 

球症状

球症状は重症筋無力症のうち、全身型に見られる口や咽喉の筋肉に症状が出るもので、口や咽喉の筋肉が正常に動かない、飲食物を飲み込む嚥下運動が上手くできない嚥下障害が起きます。嚥下障害があると飲食時にむせたり、細菌が気道内に入って誤嚥性肺炎が起こることもあります。また口の周囲の筋肉の動きが悪くなることで、しゃべりにくくなる構音障害が起きるなどの症状が出ます。

 

呼吸症状

全身型の症状の一つで、呼吸に使われる筋肉が影響を受け、日常生活をしていても呼吸のしづらさ、呼吸困難を感じるものです。

 

手足の症状

全身型の症状のうち、四肢の筋肉に影響があり、手足の筋力が低下したり、運動を続けることで疲れやすくなります。手の症状では、手の筋力が低下するため、重いものが持てなかったり、持っているものを落としやすくなるなどが見られます。足の症状では、歩くだけで疲れたり、足がもつれてこけたり、つまずき易くなることがあります。

 

目の症状(眼筋型)

重症筋無力症のうち、目の筋肉(眼筋)にのみに症状が現れるものを眼筋型と呼びます。眼筋型では、眼瞼(がんけん=まぶた)下垂といってまぶたが下がってしまう、まぶたがしっかり閉じられない、また複視と呼ばれる物が二重になって見えるや、斜視などの症状も見られます。

 

日内変動/日差変動

重症筋無力症の全般的な症状として日内変動と日差変動があります。日内変動は一日のうちで症状の軽重の変化が見られることで、通常、症状は夕方から夜にかけて重くなります。また、日差変動は日によって症状の軽重が変わることで、ある日は症状が重く、次の日はあまり症状が出ない、しばらく症状が軽かったのに、ある日急に重くなるといったことがあります。

 

重症筋無力症の分類(MGFA分類)

重症筋無力症は大きく分けると眼筋型と全身型となりますが、全身型は症状の軽重と傾向によって以下のとおり、ⅡからⅤの分類があります。

Ⅰ :眼筋型⇒眼筋および眼輪筋の筋肉以外は正常

Ⅱa:軽度全身型⇒四肢の症状が強い
Ⅱb:軽度全身型で球症状が強い

Ⅲa:中度全身型⇒四肢の症状が強い
Ⅲb:中度全身型⇒球症状が強い

Ⅳa:重度全身型⇒四肢の症状が強い
Ⅳb:重度全身型⇒球症状が強い

Ⅴ :気管内挿管された状態

 

重症筋無力症の方が仕事する上での注意点

軽症の場合は重労働を避ける

重度筋無力症のⅡa,bなど症状が軽い場合は、比較的日常生活に深刻な影響はありません。従って仕事をすることもできます。運動や動作を繰り返すことにより筋肉の疲労が溜まりますので、体を酷使するような重労働は避けるのがよいでしょう。労働する環境に危険がある場合、自分のみならず、症状が出ることで他者にも危険を及ぼす可能性もあります。重労働以外であっても、営業職や事務職でも適宜、休憩が取ることが望ましいです。

 

眼筋型の場合は運転や書類閲覧などの仕事を避ける

眼筋型では目や目の周囲の筋肉が疲労するとまぶたが下がったり、物が二重に見えたりするため、パソコン画面や書類などを長時間見るような、目を酷使するような仕事は避ける、もしくは行なう場合は職場での配慮が必要です。また自動車の運転や機械操縦など目が見えないと危険な行為や作業がある仕事も控えるべきでしょう。

 

全身型は短時間型の仕事で考える

全身型の場合は、四肢や呼吸器の筋肉に影響が出ますので、一日8時間など働く正社員としての雇用は避けたほうがよいでしょう。重症筋無力症には特にその日のうちで症状が変化する日内変動の特徴がありますので、夕方から夜にかけて症状が重くなると考えれば、非常勤やアルバイトなどの短時間勤務ができる仕事を探すことをおすすめします。

 

在宅ワークという選択肢

近年、国がテレワークと呼んでいる在宅ワークも視野に入れてみるのもよいでしょう。在宅ワークは会社に所属して在宅勤務を行なうものと、いわゆる自営業者として企業が募集する案件の委託先となって請け負う自営型の在宅ワークに分けられます。どちらにせよ、会社に通勤する手間がなく、体への負担が少ないのがメリットで、仕事と休憩のバランスもある程度自分で調整することができるので、在宅ワークは重症筋無力症の方にもおすすめできる働き方です。

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重症筋無力症の方の理想の職場の条件

職場で必要な休憩や自己管理ができる

重症筋無力症がある場合、休憩をするときもただ単に座るだけでなく、横になったり、その人がゆっくりできる姿勢を取れる座敷や休憩スペースがあると助かります。またできるだけ一人になれたり、静かにできる空間などがあるとストレスの解消やセルフコントロールもできます。このような設備があると障害や病気を抱える人だけでなく、障害や病気のない人も利用でき働きやすい環境といえるでしょう。

 

生活全般について相談できる窓口がある

障害や病気を抱えている場合、気軽に質問したり、悩みを相談できる窓口や担当者などを設置していると働きやすくなります。仕事のことに関しては同じ部署の同僚や上司など明確な担当者、健康に関しては産業医や産業保健師、メディカルソーシャルワーカーなど、生活全般や悩みなどについてはカウンセラーがいるなどそれぞれの内容によって相談できる担当者や窓口があると色んな不安が軽減され安定して働くことにつながります。

 

職場の上司や同僚が病気や障害に関する正しい理解がある

職場において、上司や同僚がしっかりと病気や障害に対して理解があることは、ある意味一番重要と言えます。職場の施設や機器が障害や病気を抱える人に配慮されたものであったとしても、上司や同僚がその障害や病気を持つ人に正しく接することができなければ、その人たちは長く安定して働くことはできません。

バリアフリーなどの設備面だけを充実させるだけではなく、従業員に対し、障害理解を深めるような研修や啓蒙活動が必要となってきます。

 

産業医・産業保健師によって健康管理が行なわれる

産業医、産業保健師とは一定の規模以上の企業が嘱託で雇用する医師や保健師のことです。従業員の健康のために会社や従業員の相談に乗ったり、必要な医療機関などを紹介してくれたりします。

職場に医療や保健の専門家がいることにより重症筋無力症の人だけではなく、さまざまな心身の状態を把握し、健康管理を正しく行ってくれるため、従業員は長く安定して働くことが期待できます。

 

通院への配慮をしてくれる

重症筋無力症に限らず、難病や障害のある人で定期的に通院をしている人は、症状の安定や改善がみられることが多く、従って安定して長期に働ける、そしてそれがキャリアアップや昇給にもつながるという大きなメリットがあります。どうしても病院の診療は平日がメインであることから、出勤日の午前中や午後などに通院できる配慮をしてくれる職場が望ましいでしょう。

 

勤務中に休憩を取りやすい

重症筋無力症がある場合、その症状の特性から適宜、休憩を取る必要があります。そもそも、仕事内容や勤務形態など休憩を取りやすい仕事を探してみることも大事です。同僚などに気兼ねしたりするようなら、自分のペースでできる専門職や研究職、アート関係、また在宅ワークなど、症状に適した仕事はきっとあるはずです。無理なく働ければ仕事に集中でき、長く続けることにもつながります。

 

ユニバーサルデザインなどの筋力の低下に応じた機器・機材がある

ユニバーサルデザインとは、子どもを含めて可能な限り多くの人が使えるような設計やデザインが施されているもののことです。障害者のために造られているバリアフリーほど特化した造りではありませんが、こうした設備や機器だけでも重症筋無力症の人にはある程度働きやすくなるのです。

 

多くの重症筋無力症を抱えながら働く人たちはこのように症状があっても働きやすい職場を選んでいます。

重症筋無力症の方の職業生活を支援してくれる社会資源

主治医・専門医

重症筋無力症のような難病を抱えて働く場合、いかに健康状態を働けるレベルで維持するかが長く継続して働くことができるかの重要なポイントになります。その上で欠くことができないのが主治医や専門医による定期的な診療と適切な働き方を含む日常生活へのアドバイスです。

 

重症筋無力症は前述したとおり、症状に日内変動や日差変動があるため、症状が軽いときはついつい無理をしたり、正しい服薬を怠ったり、時に通院を自分の判断で止めてしまうということがあります。自己判断がかえって症状の悪化を招き、最悪の場合、仕事を続けることができない事態になることが危惧されます。主治医や専門医のアドバイスに耳を傾け、服薬を怠らず、生活をする上での諸注意を守るようにしましょう。

 

ハローワーク

ハローワークは公共職業安定所の別名で、働きたい国民に対して個々のニーズに応じた求人を紹介したり、就労に必要な支援や訓練などを行う公的な機関で、都道府県や政令指定都市に設置義務があります。

 

ハローワークの障害者専門の窓口には難病患者就職サポーターという難病患者を専門に支援する職員が配置されており、難病患者の生活全般や就労、健康管理などを総合的に支援する難病相談支援センターと連携を取りながら個別の条件や症状に適した設備や配慮ができる企業の求人を紹介したり、就労、そして就労後のサポートをしてくれます。

 

重症筋無力症があり就労をする際は、まずは気軽にハローワークに訪れて相談してみることをおすすめします。ちなみに重症筋無力症のような難病でも、身体の状態が等級の程度区分に該当しなければ身体障害者手帳を交付してもらうことはできません。

 

難病相談支援センター

ハローワーク同様に各都道府県および政令指定都市に設置される、難病患者やその家族に対して生活全般や療養、就労などさまざまな相談に応じて、情報提供、社会資源の紹介等をハローワークなど関連機関と連携を取り支援を行う機関です。

 

利用の仕方としては、就労を視野に入れている場合はハローワークと難病相談支援センターの両方に足を運んでみるとよいでしょう。また保健所とは支援内容が重なる部分もありますので、事前にそれぞれのホームページを見たり、問い合わせるなどして確認するのがよいでしょう。

 

 

保健所

重症筋無力症は難病法上の指定難病となりますので、同法の重症度分類等の程度に該当する重症度であれば特定医療費支給の対象となり、その申請手続きは住所のある自治体の保健所で行なうことになります。また保健所では難病患者に対して医師や保健師などが相談に乗ってくれます。自治体によってそれ以外にも訪問相談や講演会、家族会などさまざまな支援があるようです。

 

まとめ

重症筋無力症は難病法において指定難病とされる疾患です。一口に重症筋無力症と言っても、目やその周辺の筋肉にのみ症状が出る眼筋型と、全身型の2タイプに分けられます。全身型は主に四肢に症状が出るものと、球症状といって呼吸器系に影響する筋肉に症状が大きく出るものに分けられます。

 

”重症”といっても症状の軽重ではなく重力の影響を受けると言った意味合いで、実際の実際の症状の軽重は様々で、症状を持ちながら働いている人もたくさんいます。

 

重症筋無力症がありながら働いている人たちの働き方のコツはやはり自分の症状をしっかりと理解し、それに合った仕事内容、働き方をし、しっかりとした健康管理ができているという傾向が見られます。

 

重症筋無力症は日内変動や日差変動がある疾患ですので、目や体を酷使しない、疲れたらすぐに休憩できるといった職場の理解も必要となりますので、そのような職場を探すにはハローワークや難病相談支援センターなどの機関を最大限に活用しましょう。

 

日本の難病対策はまだ始まったばかりと言ってもよく、また世間一般でもまだそれほど認知されてはいません。制度面での整備も障害福祉施策の適用ができるのかなど、これからの課題はありますが、記事を参考にしながらやりがいのあるお仕事を探していきましょう。

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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