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中央省庁での障害者雇用水増し問題のその後や今後の課題とは

更新日:2023年07月06日

2018年8月に中央省庁における障害者雇用の水増し問題が発覚して以降、地方自治体においても障害者雇用が適切に行われていないことが次々発覚したことは記憶に新しいと思われます。この課題を受け、政府から2019年中に障害者を4,000人採用するという発表があり、障害者限定の公務員採用も始まりましたが、その後の状況はどうなったのでしょうか?これまでの動向のまとめと、今後の課題について考えたいと思います。

障害者雇用水増し問題とは

障害者雇用水増し問題とは、中央省庁が障害者の雇用数を実際よりも多く報告し、それが厚生労働省の再調査により明らかとなった事象を指します。

詳細

厚生労働省の再調査結果によれば、国のガイドラインに反して不適切に算入されていた障害者雇用数は、全体の約半分にあたる3460人分にのぼりました。特に影響が大きかったのは国税庁で、1000人以上の雇用数が誤って報告されていました。

影響と批判

公表されていた障害者雇用率2.49%は実際には1.19%に過ぎず、実際の雇用状況と大きな隔たりがありました。この問題は障害者雇用促進法に基づく公的機関の義務違反となり、制度の信頼性を大きく損ないました。

政府の対応

政府はこの問題を重視し、関係閣僚会議を開催。厚生労働省を中心に再発防止策の検討を進めるとともに、適正な障害者雇用促進に向けた取り組みを強化する方針を示しています。

障害者雇用水増し問題のその後

問題発覚後、2018年12月から障害者限定の国家公務員採用試験の受付けが始まりました。 ふたを開けてみると、採用予定人数676人(29省庁)に対し応募総数は8,711人に上り、競争率は13倍となりました。

 

そして2019年の6月1日の時点で中央省庁は障害者を3,623人を採用しました。障害者の雇用率未達機関は35機関から17機関と半減はしたものの、4,000人雇用という目標からは大きく未達成となりました。(法定雇用率2.5%に対し、2.31%でした)

 

そして、18年度に続き、第2回目19年度の障害者限定公務員採用試験の応募がありましたが、31機関常勤職員247人の募集に対し、4,574人が応募しました。競争率は18倍と前回試験を上回る狭き門となりそうです。

 

2019年度の試験結果は11月下旬に出されますが、今後の成り行きに注目したいと思います。

 

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障害者雇用水増し問題における民間企業への影響

早期の雇用率達成を目標に掲げたことで、その余波は民間企業にも及びました。すなわち、現職から公務員に挑戦しようという方が少なからずいらっしゃったため、思わぬ形で社員がいなくなるという事態が民間企業の間で多発したのです。

 

民間企業を辞めて中途採用された人は507人で、実に新規採用者の14%を占めました。 一方で、早期離職・退職の問題も見えています。新規採用者のうち約5%にあたる170人が既に退職されているのです。

 

こうした点を見ても中央省庁が障害者を職場に迎え入れるには未だ準備不足であるという印象はぬぐえません。

 

また、今回採用された障害者のうち、約3,000人強は臨時職員、非常勤で採用されています。数年後の契約期間が満了したタイミングで同じことを繰り返すことにしかならないわけで、根本的な解決の道筋にはつながらない気もします。賛否両論あるかとは思いますが、ここはしっかりと時間をかけて障害者も働きやすい風土を醸成しながら長期的なタームで雇用率是正計画を立ててほしいところです。

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今回の公務員採用試験の特徴をひも解くと・・・

まず応募資格については障害種別不問、かつ年齢も18歳~59歳まで応募資格があるという点です。これまで難関と思われた国家公務員採用の道が思いがけず目の前に現れたことで、多くの障害者には魅力的に映ることと思います。

 

しかし、各府省の説明資料を見ると、各省庁の業務説明に終始して採用後に担当する業務について具体的な記述が全く見られない省庁もあれば、採用後の職務や職場環境、サポート体制について具体的な言及があり、必要な情報がきちんと掲載されている省庁もあるなど、受け入れ準備度合いに大きな差があることが見て取れます。

 

また、正規職員だと選考試験やその他独自のキャリアパスで課長補佐級、係長級といったキャリアを積む道もある、と明確な道筋を提示し、職務内容に広がりが期待できる、あるいはキャリアを積むことが期待できるといった希望を感じさせてくれる説明が見られた省庁はごくわずかにとどまりました。

 

障害者採用の枠(受け皿)そのものが増えることは歓迎すべき事柄ではありますが、一方で選考過程の性質から実際に採用される障害者に偏りが見られるという問題も予想されます。

 

統一筆記試験の実施、その会場も9市に限られるといった試験を受ける上での合理的配慮に関する不備もそうですが、最近も応募資格の中に「身体障害者のみ」、「自力で通勤できること」、といった記載を残した応募内容が非難されたという報道もあったように、いまだ「健康な成人と同様にフルタイムで勤務できる人を採用したい」という中央省庁の潜在的なニーズは図らずも露呈しています。

今後、公務員採用試験に臨むにあたって

求職活動中の方で「公務員採用試験を最優先で」といった動きを取られる方もいらっしゃるかもしれません。

 

確かに公務員と言えば(正規職員になれたなら、という前提で)昇給や待遇に差はない、年間休日や期末勤勉手当(ボーナス)や退職金が貰える、定年まで勤めあげる確率は民間よりもぐっと上がるなどのイメージもあるでしょうし、何より中央省庁での勤務ということで入庁後の生活などを思い描くといろいろと希望も大きいかもしれません。

 

ただ、今回の募集職種に関しては、仕事内容が不明確なものも多く、人によっては自分が思い描く理想の職場や働き方に乖離が出る可能性もあります。就職、転職活動を進めている皆さんに置かれては、自分は何を目的に就職するのかについて今一度問いかけ、応募する職種が本当に自分の望んだものかどうかを慎重に確認してほしいと思います。

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今後の課題

2018年12月25日に厚生労働省は「国の機関等における障害者雇用状況の集計結果」を公開しました。実はそこで初めて公表されたデータがあります。

 

それは、国の行政機関に雇用された身体障害者の障害部位別内訳です(これまで厚労省は、身体障害、知的障害、精神障害の大区分の集計しか公開していませんでした)。 集計結果を見ると2018年6月1日時点で身体障害の在職者数は1,943人(実人数)でした。そのうち、「肢体不自由」が890人(46%)と「内部障害」は814人(42%)でこの2障害で8割を占めていました。一方で「視覚障害」は121人(6%)、「聴覚、音声機能等障害」は118人(6%)と少数でした。

 

この数字を見て皆さんはどう受け止めるでしょうか?国側が意図して選定した結果こうなったのか、障害当事者の職業選択の結果(視覚障害者・聴覚障害者自身が省庁の求人に応募しなかった)でこうなったのか、本当のところは分かりません。

 

いずれにせよ中央省庁が今後様々な障害者雇用を推進していくかどうかに注目が集まります。 (参考:同年の知的障害者の在籍数は175人、精神障害者の在職者数は646人)

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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