感覚過敏の症状チェック|職場での困りごとと対策方法
更新日:2025年06月25日
「オフィスの照明が眩しくて目を開けていられない」「同僚の話し声や電話の音が気になって仕事に集中できない」といった職場での悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。その症状は感覚過敏によるものかもしれません。感覚過敏とは、日常生活に支障が出るほど感覚が過剰に反応してしまう状態です。本記事では、感覚過敏の症状や原因、職場でよくある困りごとと対策法などを紹介します。
目次
感覚過敏とは
「感覚過敏」とは、五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)から受け取られる刺激に対して、感覚が過剰に反応してしまう状態です。感覚として受け取った情報を脳が過大に解釈して起こる反応と言われています。また反対に感覚が鈍い状態は感覚鈍麻と呼びます。
感覚過敏の症状や程度は人によって異なり、ある感覚だけが過敏な人もいれば、味覚と嗅覚など複数の感覚が過敏な場合もあります。感覚過敏の反応自体は病気としては扱われませんが、日常生活に支障が出るほど過敏な場合には、医療機関などに相談するとよいでしょう。
感覚過敏の種類と現れる症状
感覚過敏は、過剰な感覚の種類によってさまざまな特徴が現れます。
視覚過敏
・日光や室内の照明、パソコン画面などがとてもまぶしく感じ、目を開けていられなかったり、気分が悪くなったりする
・少しの明るさでもまぶしく感じてしまい眠れない
・目から入ってくる情報量が多いとパニックになる
聴覚過敏
・大きな音や突然の音が苦手
・小さな音でも大きく感じる
・周囲の音がすべて同じ音量で聞こえる
・周りの音か騒がしく人の話が聞き取れない
・他の人が気にならないような時計の秒針の音やエアコンの動作音などの小さな音が気になる
触覚過敏
・特定の感触(ヌルヌル・ネバネバなど)が苦手
・衣服の着心地やタグ、素材などが気になる
・肌が濡れたり汚れたりすることが極端に嫌い
・髪をとかすことや歯磨きが苦手
・マスクをすると不快に感じる
・人に触れられることが苦手
味覚過敏
・特定の食感や舌触り、味が苦手
・味や匂いや混ざった食べ物が苦手
・偏食の傾向がある
嗅覚過敏
・洗剤や柔軟剤、化粧品、香水などが苦手で時には気分が悪くなることもある
・人の汗や動物の匂いが苦手
・人が気にならないわずかな匂いも気が付く
・匂いのする場所に近づけない
感覚過敏になる原因は?
感覚過敏になる原因には、次のようなものが考えられます。
・脳機能の異常
何らかの要因によって、五感の刺激に対して脳がうまく機能せず、刺激に過剰に反応する
・感覚受容器の異常
突発性難聴やメニエール病など、目や耳、鼻などに病気があることで感覚に異常が生じる
・不安やストレス
不安や緊張、疲労によるストレスで感覚過敏になる
・発達障害
アメリカの精神医学会が作成する診断基準「DSM-5-TR」では、ADHD(注意欠如・多動症)や自閉スペクトラム症(ASD)といった発達障害の特性の一つとして、感覚過敏のような感覚異常があると記載されています。
日本で行われた最新調査(国立障害者リハビリテーションセンター 2023)では、発達障害のある人が 最もつらいと感じる感覚は「聴覚」で約 55 % を占めることがわかりました。一方、障害特性別の分析によると 自閉スペクトラム症(ASD)のある人では「触覚」の問題を最もつらいと答える割合が有意に高いことも報告されています。
感覚過敏がある方が自分でできる対処法
感覚過敏の症状がある場合には、無理に我慢せず感覚過敏による苦痛を軽減する対策を行うことが重要です。
視覚過敏の対処法
・外出する際には、帽子やサングラスなどを着用して、目から入ってくる光を少なくしましょう
・室内では照明の明るさを抑える、間接照明を併用する
・パソコンからの刺激を抑えるために、パソコン用のメガネ(ブルーライトカット機能)を着用する、ディスプレイの照度を下げる、夜間モードを使用する
聴覚過敏の対処法
・大きな音がする場所を避ける
・イヤーマフや耳栓などを着用して、大きな音や雑音をシャットアウトする
触覚過敏の対処法
・衣服はタグを切ったり、苦手ではない素材のものを選ぶ
・人に触れられるのが苦手という方は、用事がある場合はまずは声をかけてもらう
味覚過敏の対処法
・苦手な物は無理して食べず、栄養が偏らないように配慮する
・味や食感が嫌な場合は、味付けや調理法を工夫する
・味が混ざらないように盛り付けを工夫する
嗅覚過敏の対処法
・マスクを着用する
・タオルで鼻を塞ぐ
・自分の好きな香りを身につけて、苦手な匂いを感じないようにする
感覚過敏がある方の職場での困りごとと対策
感覚過敏がある方は、職場で次のような困りごとを抱えているケースがあります。この章ではよくある困りごとと対策の例を紹介します。対策については職場の理解が必要な場合もあるので、感覚過敏で苦痛を感じている方は、上司や先輩に相談してみましょう。
視覚過敏の方の職場での困りごとと対策
「視覚過敏」の方は、「オフィスの照明が眩しすぎて目を開けていられない」や「パソコンの画面を見ていると頭痛やめまいが起こる」などのことがあります。このようなケースでは、カラーレンズのメガネや薄い色のサングラスをかけたり、パソコン用のブルーライトカットメガネをかけるなど、目から入る刺激を軽減する対策が必要です。
それでも、視覚過敏によって苦痛や疲れを感じる場合は、目薬を使用したり休憩時間には目をつぶって過ごすなどして、目の疲労を回復させるとよいでしょう。
聴覚過敏の方の職場での困りごとと対策
聴覚過敏の方は、オフィス内での話し声や電話の音、プリンターの音などが気になってしまい、仕事に集中できなかったりストレスに感じることがあります。
イヤーマフや耳栓、イヤホンなどを着用して周囲の音を遮断するのが効果的ですが、職場によっては着用するのが難しいことがあるでしょう。その場合には、上司に相談して別の静かな部屋で仕事をさせてもらったり、在宅勤務を認めてもらうようにお願いしてみましょう。聴覚過敏の場合には、音が出る場所から離れて耳を休ませる時間を取ることが大事です。
触覚過敏の方の職場での困りごとと対策
触覚過敏の方には、会社の制服の素材が苦手で着られない、マスクの着用ができないといった困りごとがよくあります。制服にもよりますが、ワンサイズ大きい制服を着ることで皮膚に当たる刺激を少なくすることができます。また、自分に合った素材の肌着を下に着ることで、制服の素材が直接皮膚に触れないようにすることができます。
人に触られることが苦手で物の受け渡しができない場合には、直接受け渡しするのではなく一度机に置いてもらったり手袋をつけるなどの対策があります。
味覚過敏の方の職場での困りごとと対策
同僚とのランチや飲み会など、他の人と食事に行くときに苦手な食感や味の料理を食べることができず、参加することが負担となることがあります。自分が味覚過敏があってどのようなものが苦手かを、予め伝えておきましょう。
嗅覚過敏の方の職場での困りごとと対策
嗅覚過敏の方は、オフィスで近い席の方の柔軟剤や香水、汗の匂いで気分が悪くなることがあります。対策としては席を離してもらう、マスクをするなどの方法があります。職場自体の匂いが気になる場合は、休憩時間には外に出るなど匂いとの距離を置くことが重要です。
一人で悩まず上司や同僚に相談する
感覚過敏によって職場で苦痛を感じている方は、ひとりで悩まずに上司や同僚に相談しましょう。これまで対策法について紹介しましたが、対策の中には職場環境の調整やツールの使用など必要なものもあり、自分だけで何とかしようと思っても限界があります。
感覚過敏が個人の問題ではなく、仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことを伝えれば、職場で何らかの対策を講じてくれる可能性があります。もし理解が得られないようであれば、産業医に相談する方法もあります。
産業医とは、労働者の健康管理や健康保持増進のために、専門的な立場から指導や助言を行う医師のことです。労働安全衛生法では、
・常時 50~999 人の事業場:産業医 1 名(嘱託可)
・常時 1,000~2,999 人の事業場:専属産業医 1 名
・常時 3,000 人以上 の事業場:専属産業医 2 名以上
の配置が義務付けられています。条件を満たしていれば、あなたの勤務先にも産業医がいるはずなので相談してみましょう。
感覚過敏は何科を受診したらよい?
まずは、感覚過敏の症状がある感覚受容器に関係する診療科を受診しましょう。視覚過敏なら眼科、聴覚過敏や嗅覚過敏、味覚過敏の場合は耳鼻咽喉科を受診して、特定の疾患や障害がないか検査してもらいましょう。検査により感覚過敏の原因が分かれば適切な治療が受けられます。
原因が分からないときには、心療内科や精神科を受診してみてください。発達障害や精神疾患、過度なストレスが原因で感覚過敏の症状が現れている場合があります。
感覚過敏を直接的に治療する方法はありませんが、仕事に影響がある場合には配慮に関する助言を診断書として出してもらうことが可能です。病院で相談してみてください。
感覚過敏が原因で就職や転職に悩んだら
先にも述べましたが、発達障害の方は感覚過敏に悩むケースが多いとされています。感覚過敏の症状によって、就職や転職に不安を抱えている方は、就労移行支援サービスを利用するという方法もあります。
「就労移行支援」は、一般就労を目指す障害のある方に働くためのスキルを身につけるためのトレーニングを行い、就職活動や職場定着をサポートする障害福祉サービスです。
「atGP(アットジーピー)ジョブトレ」は、障害者の転職サービス業界No.1の障害者の求人転職情報・雇用支援サービス「atGP」が運営する就労移行支援サービスです。うつ病・発達障害・統合失調症・聴覚障害・難病といった5つの障害に特化したコース制で、自分の障害に合ったトレーニングが受けられます。
まとめ
感覚過敏の症状が重い場合には、日常生活や仕事に大きな影響を与える可能性があります。感覚過敏で苦痛を感じているかたは、まずは眼科や耳鼻咽喉科など症状がある感覚受容器に関係する診療科を受診しましょう。特定の疾患や原因が分からないときには、心療内科や精神科も受診してみてください。発達障害が原因で感覚過敏の症状が現れている場合があります。