コミュニケーション障害とは?症状の特徴とチェックする方法
更新日:2025年06月25日
コミュニケーションや対人関係が苦手であるといった性格を「コミュ障」と表現することがあります。一方で、「コミュニケーション障害」は、医学的な診断に基づいて判断される話す・聞く・書くなど言葉を使うことに障害が生じる疾患です。この記事では「コミュニケーション障害」の症状や治療法、本人ができるストレス軽減の工夫などを紹介します。
目次
コミュニケーション障害とは
本来、「コミュニケーション障害」とは医学的な診断に基づく精神疾患を表しています。しかし、近年では若者を中心に「コミュ障」という言葉が、医師の診断に関係なく一般的に使われるようになりました。
アメリカ精神医学会が設定している診断基準「DSM-5」では、「コミュニケーション障害」を、言葉を扱うことに対して障害が発生する複数の疾患をまとめた「コミュニケーション症群/コミュニケーション障害」として分類しています。
これに対して若者が使用する「コミュ障」は、「人見知り」や「緊張して話せない」「会話が続かない」「自信を持って話せない」など、疾患ではなく性格上の悩みの意味で使われることが一般的です。
医学的なコミュニケーション障害の症状
医学的な診断に基づく「コミュニケーション障害」の主な症状には次のようなものがあげられます。
これらの症状が頻繁に起こる場合には、専門医を受診しましょう。
コミュニケーション障害の種類とそれぞれの特徴
コミュニケーション障害は、5つの疾患に分類されています。それぞれの疾患について特徴を紹介します。
言語障害/言語症
「言語障害/言語症」は、話す・書くといった言語の習得や使用の困難をともなう症状です。
「言語障害/言語症」は、発声発語器官(唇、顎、舌、鼻、喉、気管など声を出すための器官)のどこかに異常があるため正しい発音ができなくなる「構音障害」と、大脳の言語領域に異常が起こり言葉を使うことができなくなる「失語症」の2つに分けられます。
「構音障害」は、「声が出ない」「声は出るがはっきりと発音できない」「特定の音が出ない」「舌がもつれる」「ろれつが回らない」などの症状が現れます。
「失語症」の症状は、「言葉が出ない」「言い間違いが多い」「言葉は出るがその場に適切な言葉を選べない」「意味不明な言葉を話す」などの話すことに関する障害、「音は聞こえるが内容が理解できない」といった聞くことに関する障害、「文字が読めない」「字が書けない」「文字は読めるが内容が理解できない」などの読む書くに関する障害など多岐にわたります。
吃音(小児期発症流暢障害)
「吃音」は、語頭音を繰り返したり、引き伸ばしたり、詰まったりして滑らかに発話ができなくなる言語障害です。ほとんどが幼少期に発症するため、「小児期発症流暢障害」とも呼ばれます。
「吃音」には、連発(繰り返し)・伸発(引き伸ばし)・難発(ブロック)といった3つの症状があります。それぞれの特徴は次の通りです。
・連発:音や語の一部を繰り返す状態、特に最初の音を繰り返す。例えば「わたし」という言葉⇒「わ、わ、わたし」
・伸発:語の一部が伸びてしまう状態。例えば「わたし」という言葉⇒「わーーたし」
・難発:言葉を発するときに詰まってしまう状態。のどに力が入り最初の音だけ大きくなる。例えば「わたし」という言葉⇒「(……)っわたし」
語音症(語音障害)
「語音症(語音障害)」は、脳性麻痺や口唇口蓋裂、難聴など身体的な障害や神経学的な障害がないにも関わらず、言葉をうまく発することが難しい状態のことです。
症状の始まりは発達期早期(幼少期)だといわれており、思っている言葉を正しく発することができないため、本人の考えが周囲に伝わらず、社会参加や学業成績、職業的能力が制限されます。
就学前や小学校低学年のうちに、言語聴覚士などによる治療を受けた場合には改善されるケースが多いですが、言語症を併存する場合は改善が難しく限局性学習症を伴うこともあります。
社会的コミュニケーション症
「社会的コミュニケーション症」は、社会生活において必要とされる効果的なコミュニケーションが困難な状態です。特に、言葉以外の表情や声のトーン、ジェスチャー、姿勢など「非言語的コミュニケーション」に応じた言葉の理解が難しいために、社会生活で支障が出ます。
主な症状には、次のようなものが見られます。
特定不能のコミュニケーション症
「特定不能のコミュニケーション症」とは、これまでに挙げたコミュニケーション症の症状が見られるものの、どの疾患の診断基準にも当てはまらない場合です。
コミュニケーション障害をチェックする方法
次に紹介するチェックリストは、正式な診断を行うものではありませんが、該当する項目があり、日常生活や社会生活に困難を感じている場合は、医療機関や心理カウンセラーなどの専門家に相談してください。
コミュニケーションに困難が生じる他の疾患
コミュニケーション障害以外にも、コミュニケーションに困難が生じる疾患があります。主なものには発達障害があげられ、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)それぞれに次のような特徴があります。
他にも知的障害、てんかん、脳性麻痺による構音障害、口唇口蓋裂、トゥレット症などの疾患でもコミュニケーションに困難が生じるケースがあります。
コミュニケーション障害の原因とは
「コミュニケーション障害」の原因については、現在のところはっきりと分かっていません。
しかし、「言語障害/言語症」や「吃音(小児期発症流暢障害)」については、遺伝要因があるのではないかと言われています。また、「社会的コミュニケーション症」では、家族の中に「自閉スペクトラム症(ASD)や「コミュニケーション障害」がある人がいる場合が多いとされています。
コミュニケーション障害の治療法
前述した通り「コミュニケーション障害」は5つの疾患に分類されているため、障害の種類や症状によって治療法は異なります。
「言語障害/言語症」「語音症(語音障害)」
「言語障害/言語症」と「語音症(語音障害)」の治療には、言語聴覚士による言語療法がおこなわれることがあります。言語療法とは、言語理解、発話、社会的コミュニケーション能力の改善を目的として行われるリハビリテーションです。
吃音(小児期発症流暢障害)
「吃音(小児期発症流暢障害)」の場合には、言語聴覚士による言語療法の他に、吃音が出やすい状態を周囲が理解して環境を調整したり、カウンセリングや認知行動療法などによって症状をコントロールすることができるケースがあります。
社会的コミュニケーション症
「社会的コミュニケーション症」の場合には、社会生活や日常生活を円滑に送る際に必要となるスキルを身につけるためのSST(ソーシャルスキルトレーニング)を行うことで、状況に応じたコミュニケーションを習得できるケースがあります。
コミュニケーション障害でのストレスを軽減する方法
「コミュニケーション障害」の方は、コミュニケーションの困難が原因でさまざまなストレスを感じています。医学的な診断基準で分類される「コミュニケーション障害」を治療するには、専門医に相談することが必要です。しかし、職場において「コミュニケーション障害」の方がストレスを軽減するためにできる工夫もあります。
発話が難しい場合はメモやメールで伝える
「言語障害/言語症」や「語音症(語音障害)」によって発話に困難がある場合には、相手にメモを書いて渡したり、メールで伝えることでコミュニケーションが可能です。また、最近ではタブレット端末やスマートフォンに文字を入力して相手に伝える方法もあります。
社会的コミュニケーションが難しい場合はパターンで覚える
「社会的コミュニケーション症」の方は、挨拶やあいづち、会話の社会的なルールを理解することが苦手です。ちゃんとしようと意識すればするほど、緊張して会話が難しくなります。
挨拶やあいづちの場合には、どのようなタイミングで行えば良いのかをパターンで覚えてみましょう。完璧なコミュニケーションをしようと頑張りすぎるとストレスとなります。まずはできることから、少しずつ覚えましょう。
コミュニケーション障害のある人が利用できる支援
「コミュニケーション障害」の症状によって、日常生活や仕事で困りごとがあり自分だけで解決できない場合には、一人で悩まずに支援機関や専門家のサポートを受けましょう。
障害者就業・生活支援センター
「障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)」は、障害のある方の就業面と生活面の一体的な相談や支援を行う支援機関です。具体的な支援内容には次のようなものがあります。
地域障害者職業センター
「地域障害者職業センター」は、障害のある方に対して専門的な職業リハビリテーションを提供している施設です。ハローワークや企業、医療や福祉機関と連携して、就職を希望する障害者一人ひとりのニーズに合わせた職業リハビリテーションを実施しています。
障害者の就職を支援するサービス
「コミュニケーション障害」など障害がある方の就職を支援しているサービスには「就労移行支援」もあります。「就労移行支援」は、障害者総合支援法に定められている障害がある人に就労支援を行う通所型の障害福祉サービスです。「就労移行支援事業所」では、就職に向けたトレーニングや就職先とのマッチング、就職後の定着支援などを行います。
「atGPジョブトレ」は、障害者の転職サービス業界No1の「atGP(アットジーピー)」が運営する就労移行支援サービスです。障害に特化したコース制なので、自身の障害とうまく付き合いながら働き続けるためのスキルが身につきます。
まとめ
「コミュニケーション障害」は、「言語障害/言語症」「吃音(小児期発症流暢障害)」「語音症(語音障害)」「社会的コミュニケーション症」「特定不能のコミュニケーション症」といった5つの疾患に分類され、それぞれ原因や症状が異なります。日常生活や社会生活でコミュニケーションが困難で困っている方は、医療機関やカウンセラーなどに相談しましょう。