就労移行支援とトライアル雇用は併用できる?併用するメリットと注意点
更新日:2025年06月25日
就労移行支援を利用して就職を目指している方の中には、希望した企業に就職できたとしても、本当に長く勤めることができるのか不安に感じているケースも多いのではないでしょうか。「トライアル雇用」を利用すると、実際に働いてみないとわからない業務内容や職場の雰囲気などを知ることができ、入社後のミスマッチを防ぐことができます。今回は「トライアル雇用」の内容や利用するメリットと注意点について詳しく解説します。
目次
就労移行支援とトライアル雇用は併用できる?
結論から先に申し上げると「就労移行支援」と「トライアル雇用」は併用可能です。それぞれの制度の内容と併用する際の注意点について説明します。
就労移行支援の利用条件
「就労移行支援」とは、障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスのひとつです。企業などで働きたい障害のある方に、働くために必要な知識やスキル向上のサポートを行います。
「就労移行支援」を利用するには、次に挙げる4つの条件を全て満たす必要があります。
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トライアル雇用制度とは
「トライアル雇用」とは、就労経験が少なく常用雇用(期間の定めのない雇用)で就職することに不安のある⽅などが、常⽤雇⽤へ移⾏することを前提として、その企業で試⾏雇⽤として働いてみる制度です。求職者と企業のお互いが理解した上で、無期雇用に移行するため、入社後のミスマッチを防ぐことができます。
「トライアル雇用」には、一般トライアルコース・障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースの種類があります。
就労移行支援とトライアル雇用の併用について
「就労移行支援」と「トライアル雇用」は併用することができます。2つの制度を併用することで、トライアル雇用の期間も就労移行支援事業所のスタッフからサポートを受けることができます。
就労移行支援によって常用雇用された場合も、職場定着の支援は受けられます。しかし、通常は月に1回程度です。一方で併用する場合は、まだ就労移行支援事業所の利用期間中のため、必要に応じて事業所に相談することができます。
ただし、トライアル雇用されている間も就労移行支援の利用期間に含まれてしまいます。就労移行支援の利用期間は原則2年間なので、2年間にカウントしたくない場合は、一旦就労移行支援の利用を中断しましょう。
障害者トライアルコース
トライアル雇用制度には、一般トライアルコース・障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースがあります。ここでは障害者トライアルコースの内容について紹介します。
「障害者トライアル雇用」は、障害のある方を約3〜6ヶ月の間、試行雇用することで、企業と障害者相互の理解を深め不安を解消することで、継続的な雇用をめざす制度です。対象者は、障害があり次の4つのいずれかに当てはまる人です。
①これまでに働いたことのない職業に挑戦してみたい方
*紹介日時点で就労経験のない職業に就くことを希望していること。
②離転職を繰り返し、長く働き続けられる職場を探している方
*紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返していること
③働いていない期間がしばらくあったが、再び就職しようと考えている方
*紹介日の前日時点で離職期間が6か月を超えていること
④重度身体障害、重度知的障害、精神障害のうちいずれかのある方
*④の方は、①〜③の要件に関わらず、障害者トライアル雇用の対象になります。
なお、障害者手帳を取得していない場合でも、障害がある方であれば対象に含まれることがあります。
障害者短時間トライアルコース
障害の程度によっては、週20時間以上勤務するのが難しいというケースもあります。「障害者短時間トライアルコース」は、週の所定労働時間を10時間以上20時間未満として、職場適応状況や体調などに応じて、期間中に20時間以上を目指す制度です。
「障害者短時間トライアルコース」の対象者は、精神障害あるいは発達障害がある方のなかで、継続して雇用される労働者として雇入れられることを希望し、制度を理解したうえで、制度を利用した雇入れを希望している方です。
企業側は対象者1名につき月額最大4万円を受給できますが、次の2つの条件で雇用する必要があります。
① ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
② 3ヶ月から12ヶ月間の短時間トライアル雇用をすること
障害者トライアル雇用を利用するメリット
「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」を利用すると、企業側と障害者それぞれに次のようなメリットがあると考えられます。
企業のメリット
業務への適性や能力を見極めた上で、常用雇用するかどうかを決められることは、企業にとって大きなメリットです。応募書類や限られた面接時間だけではわからないことも、「障害者トライアルコース」や「障害者短時間雇トライアルコース」を利用することで、期間中に判断できるので、企業が求める人材を採用しやすくなります。
人を採用するには時間や労力がかかります。ミスマッチは企業にとっては大きなリスクです。制度を利用することで、ミスマッチを発見して採用後の早期離職を防ぐことができます。また、トライアル雇用終了後の常用雇用は義務ではないため、企業が求める人材と異なる場合には、期間満了によって雇用契約を解除することができます。
要件を満たすことで助成金が支給されるため、雇用コストを削減できるのも企業にとってはメリットです。
障害者のメリット
障害のある方が「障害者トライアルコース」や「障害者短時間トライアルコース」を利用するメリットは、実際に働いてみなければわからない職場の雰囲気や業務内容が自分に合っているのかどうかなどを、体験することができることです。
せっかく就職できても、入社後に「こんなはずではなかった」とミスマッチを感じて、早期離職するケースは少なくありません。「障害者トライアルコース」や「障害者短時間トライアルコース」の期間中に、業務内容や職場の雰囲気、受けられるサポートなどを確認することで安心して働くことができます。
障害者トライアル雇用を利用する際の注意点
「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」を利用する際の注意点について紹介します。
企業側の注意点
「障害者トライアル雇用」制度を利用する際、企業は次の点に注意しましょう。
・障害者トライアル雇用のための求人票の作成が必要
障害者トライアル雇用制度は、障害者トライアル雇用の求人にのみ適用されます。そのため障害者トライアル雇用のための求人票を作成する必要があります。一般的な求人に応募されたケースは障害者トライアル雇用の対象にならないため注意が必要です。
・求人数を超える障害者トライアル雇用はできない
上記の様に障害者トライアル雇用制度を利用する際には求人票の作成が必要ですが、求人票に記載した求人数以上の障害者トライアル雇用は認められていません。求人数以上に雇用すると、助成金が受給できなくなる可能性があるので注意しましょう。
障害者側の注意点
「障害者トライアル雇用」は、障害者の常用雇用を促進するための制度なので、先に説明した通り多くのメリットがあります。しかし、利用する際には以下の点に注意しましょう。
・必ず常用雇用されるわけではない
「障害者トライアル雇用」から常用雇用に移行した方は全体の8割を超えています。しかし、必ず常用雇用されるわけではありません。業務への適性が無いと判断された場合には、トライアル雇用期間終了後に契約を解除されることもあります。
・複数の企業に応募することができない
「障害者トライアル雇用」の期間中は、他の企業への就職活動をすることができません。したがって、本当に就職したい企業ややりたい仕事の求人に絞って応募しましょう。
トライアル雇用期間中に自己都合で辞めてしまったり、期間終了後に契約を解除されてしまった場合、短期間で離職したという職歴が残って、その後の就職活動に不利となる可能性があります。
障害に特化したコース制の就労移行支援サービス
障害のある方は、就職活動にさまざまな悩みや不安を抱えています。それらを軽減するには、障害者の就職や転職に詳しいプロに相談するのがおすすめです。
「atGP(アットジーピー)ジョブトレ」は、障害者の転職サービス業界No.1の「atGP」が運営する就労移行支援サービスです。うつ病・発達障害・統合失調症・聴覚障害・難病の5つの障害に特化したコース制なので、自分の障害と上手く付き合いながら働き続けるためのスキルが身につきます。
障害者の就職や転職に詳しい専門家が、就職に必要なスキルの習得から、就職活動のサポートや就職後の職場定着までトータルでサポートしています。
まとめ
「障害者トライアル雇用」は、障害のある方が継続的な雇用を目指して、実際に働いてみなければわからない職場の雰囲気や業務内容が、自分に合っているのかどうか体験できる制度です。
「障害者トライアル雇用」と「就労移行支援」は併用することができます。併用すればトライアル雇用の期間中も、就労移行支援事業所のスタッフからアドバイスやサポートを受けられて、継続して雇用される可能性が高まります。