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発達障害でも大学生活や就職はできる?学校や職場で受けられる支援とは?

更新日:2021年11月12日

発達障害のある人の比率は正確にわかりませんが、文部科学省の2012年の小中学校への調査では、発達障害の”可能性がある”児童は全体の約6.5%という結果が出ています。10数年前でも、一クラス50人とすれば、4,5人は発達障害があるとも言われていましたので、実際の数値はもっと高い可能性もあるようです。そのような発達障害を抱える子どもたちが大きくなり、人生の一つの大きな決断をする時が高校卒業後の進路と言えるでしょう。大学などへの進学や就職活動、そしてその先にある就職では、それまでと違い、より社会に合わせた自立した行動や振舞い、考え方が必要になってきます。今回は発達障害のある人の大学での生活や就職に際した困りごとや悩みごと、そしてそれに対する学校や職場で受けられる支援について詳しくご紹介していきます。

発達障害とは?

まず、始めに発達障害とはどのような障害なのか解説していきます。2005年に施行された発達障害者支援法の第2条には、発達障害を以下のように定義しています。

 

「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」(発達障害者支援法第2条)

 

発達障害は現在のところ、主に3つに分類できると言っていいでしょう。

 

①自閉症スペクトラム障害(ASD)

広汎性発達障害とも呼ばれ、以下がその中に存在します。

・自閉症

・アスペルガー症候群

・レット症候群

・小児期崩壊性障害

 

②学習障害(LD)

知的な遅れはないにも関わらず、読み書き、計算などの特定の学生がうまくできない障害です。

 

③注意欠陥多動性障害(ADHD)

多動や注意力がない、衝動性が高いなどの症状が特徴として挙げられます。

 

発達障害の症状は人によって様々で、症状が重なっていることも多く、必ずしも明確な診断名が出るわけではありません。

 

発達障害の原因とは

発達障害の定義で触れられていますが、発達障害は脳機能の障害と言われています。ただし、具体的に何が脳機能の障害を起こしているのかについてはまだまだ解明されていない部分が多くあります。発達障害における脳機能の障害は遺伝子や胎児期の母親の置かれていた環境などの先天的要因であることはわかっていますが、こちらも具体的な原因は未だ不明です。しかし、自閉症スペクトラム障害の場合、胎児期の風疹への感染や、フェニルケトン尿症などに合併することがあるようです。一時期、ワクチン接種要因説がありましたが、現在は否定されています。

 

 

発達障害の種類

ASD(自閉症スペクトラム障害)

発達障害の症状の出方は人によって様々です。自閉症スペクトラム障害と学習障害、注意欠陥多動性障害の境界が曖昧なように、自閉症や、アスペルガー症候群などのいわゆる広汎性発障害も同様で、明確に分けられないケースも多く、一つの症状の様々な現れ方を境界が曖昧な連続体と捉え、自閉症”スペクトラム”と呼ぶようになりました。特徴的な症状としては、「意思伝達の質的な障害」や「対人的相互作用の質的な障害」があり、基本的には自分の意思を相手に伝えるのが難しく、人との関係がうまく築けません。また環境や状況の変化を嫌う傾向が強く(同一性の保持)、変化があると馴染めなかったり、変化を拒否するような激しい反発やパニックを見せることもあります。新しい環境や新しいことに挑戦する場合は周囲の協力や工夫が必要です。

 

発達障害そのものは原因がまだ明らかになっていませんので、自閉症スペクトラム障害の原因も詳細はわかってはいません。発症率は約1%と言われていますが、男性の方が女性の4倍ほど発症率が高いようです。アスペルガー症候群のように、知的な遅れを伴わない場合、児童期に発見されないこともあり、生きづらさを感じながら社会生活を送るケースもあります。

ADHD(注意欠如・多動性障害)

最近ではよく注意欠如・多動性障害と呼ばれることが多い、障害名のとおり、不注意や、多動、衝動性を中心とした症状の発達障害で、その有病率は3~7%と発達障害の中でも多く、児童期では10%前後がADHDを持っているとも言われています。またこちらも男児の方が女児よりも5倍ほど発症率が高くなっています。

 

具体的な症状としては、集中力が持続しないため、仕事や学業において相手の話が十分に聴けなかったり、ケアレスミスが目立つのが注意欠陥で、じっとしていることが難しく、落ち着きがなくすぐに席を立って動き回ったりするのが多動、そしてあまり深く考えずに行動してしまうため、周囲から見ると突拍子もない不思議な行動に見えたり、事故に遭ったり、危ない目に遭い、場合によっては他者を巻き込んでケンカや事件に発展するようなケースもあります。

 

ADHDについても脳機能の障害という以外に原因は明確ではありませんが、ドーパミンやノルアドレナリンといった、脳内物質の機能低下が見られるという報告もあるようです。

 

LD(学習障害、限局性学習症)

学習障害についても有病率は明確ではありません。少し古いデータになりますが、平成14年の文部科学省の調査では、4.3%という数値があります。認知度が上がってきたため、近年ではもっと増えていると推測されます。

 

学習障害の大きな特徴として、読み書き、計算などの学習に関することが挙げられます。他にも、聞く、話す、推論することも含まれます。他者との距離感や雰囲気や状況が把握できないこともあるようです。これら全てができないわけではなく、このうちの一つ、または複数ができないというケースも少なくありません。読み書きに関しても、読み書き全体が苦手な場合も、どちらかが苦手、ひらがな、カタカナ、漢字の読み書きのいずれかの一方ができないということもあります。

発達障害が大学生活へどう影響を与えるか?

 

発達障害がある場合、大学等の高等教育機関に進学すれば、ある程度、自立的、自主的に授業に参加しないといけないため、今まで以上に大きな影響があると考えられます。

 

大学側からの保護者への連絡やアプローチの度合いは極端に少なく、学生が遅刻、欠席、提出物を提出しないなどについていちいち報告することはありません。ある一定回数の欠席をした時点で学生に注意を促す学校はあります。学生数が多い学校では授業中、教員と個別に話す機会は少なく、授業内容がわからなかったり、質問があれば学生自ら積極的にアプローチしなければなりません。また学生同士の人間関係が構築できなければ授業に関する情報が回って来なかったり、充実したキャンパスライフは送れず学校へ足が進まなくなる可能性もあります。

 

発達障害という診断を受け、自分で認識している場合、認識していてもカミングアウトするのか、しないのか、発達障害であることが今まで認識できておらず、教職員やスクールカウンセラーなどに相談する、または向こうからのアプローチで病院に行き診断が出るようなケースもあり、ケースによって違いはありますが、いずれにせよ大学生活に様々な影響があることは間違いありません。

 

現在では様々な障害のある学生の高等教育機関への進学が増えていて、障害者差別解消法の施行も手伝って、学校側でも障害者への指導や受け入れなどの支援態勢がしっかりできているところが増えています。

 

発達障害についても教職員が知識を持っていて、障害を隠していたとしても発覚するケースもあります。よりよい理解と支援を受けるためには、診断が出ているのであれば入学する前から相談する方がよいでしょう。

発達障害のある学生が抱えやすい学内での困りごと

生活習慣

発達障害のある学生では、自己管理をすることが難しい傾向にあります。自宅や自分の部屋の整理整頓ができないことが多く、学校の授業に必要な教科書や筆記用具、そして提出すべきレポートや課題を持っていくことができないという事例も多くあります。

 

渡した資料や課題のプリントも結局見つからず、「新しいプリントをもらっていいですか」ということも頻繁にあります。効果的な学習ができないので必然的に課題や試験の評価は低くなり、単位が取れないという事態になりがちです。こだわりや、衝動性があると規則正しい生活は困難となります。規則正しい生活ができず、授業を欠席したり、せっかく出席してもずっと寝ていて先生の話を聞かず、板書を取らないこともよくあります。睡眠や食事はバランスを崩すと健康を害しますので、そこから心身の病気にかかりやすくなり、それが理由で長期欠席をして単位が取れなくなることもあります。

 

人間関係

自閉症スペクトラム障害の場合は円滑な人間関係をうまく築くことができません。自分から他者に対して積極的にアプローチすることは苦手なうえ、コミュニケーションが上手ではありません。話は出来ても、表情や感情を表出しない、身振り手振りのアクションなどもない会話では他の学生もなかなか興味を持ってくれませんし、親切にしてくれる人がいたとしても助けを求めたり、感謝するような反応もなく、素っ気ない話し方をしてしまうのでやがて距離を置いてしまいます。

 

先生に対しては授業中は個人的に話す機会はほとんどなく、質問に答えたりと必要な会話しかしません。事前に発達障害があることを学校に話していなければ向こうからアプローチしてくることもないでしょう。実際のところ、学友や教職員の支援がなければ学習面でもキャンパスライフの面でも自分の力だけでは難しいものです。

 

入学当初から学校や学友に発達障害があることや具体的な特性を伝えて理解を得れば、教職員が声をかけてくれたり、同じ授業を受けている学生で友達になってくれたり、親切にしてくれる人はきっといるはずです。障害がない学生も多くは友達と情報を共有したり、助け合いながら授業を受けたりキャンパスライフを送っています。大学生活をする上では人間関係の構築は非常に重要なのです。

 

スケジュール管理

注意欠如・多動性障害などでは、衝動性という特性があるため、物事を計画的に進めることができません。大学などの高等教育機関での授業は自ら主体的に計画性をもって臨むことが求められますので、注意欠如・多動性障害の特性のある学生には大きな困難となります。ほとんどの学業や行事の日程などの連絡は学年暦や学生便覧、シラバスで知らされ、いちいち言葉で説明してくれませんので自分で理解して行動する必要があります。ホームルーム教室もなく、担任の教員もいない学校が多い中、それらの情報を理解しながら自分で時間割を作ったり、単位計算をしたり、授業が行われる日時と教室を理解して参加しなければならない部分は発達障害がない学生でもなかなか難しいものです。また学業だけでなく、友達やクラブ・サークルのメンバーとの待ち合わせなども増えていきます。目の前に時間割やスケジュール帳があっても、何かに気を取られれば時間通りに行動できないのがこの障害の特性なのです。

困りごとに対しての教育機関はどう支援してくれる?

 

対応は学校によって違う

発達障害だけではなく、障害のある学生への対応については原則的なことは文部科学省などから対応指針やマニュアル、事例などが各学校へ通知されています。しかし実際できることは「障害者差別解消法」にも書かれているとおり、「合理的配慮」の範囲とされていますので、その学校の規模や教職員数、施設、設備などによって対応は違うのが現実です。合理的配慮というのは支援を必要とする側と支援する側のお互いに納得のできる範囲で提供されることが前提なので、どちらか一方の都合だけで支援内容を決めることは合理的ではありません。

 

 

例えば、大きな、資金力のある大学なら、発達障害者を支援するための組織(人員)も設備、機器なども充実していると考えられます。出来る限りの配慮を提供してもらえるでしょう。しかし、逆に規模の小さい大学、短大、専門学校では教職員の人数も少なく、設備や機器にはお金をかけることができません。しかし実際はどのような支援が受けられるのかは、やはり入学する前に聞いてみる必要があるでしょう。

 

規模の小さい学校でも、逆に少人数のため、一人一人の学生に目が行き届いたり、困っている様子や変化に気づきやすいというメリットもあります。担任制を敷いている学校もありますので、少人数の家庭的な雰囲気の学校の方が手厚い支援を受けられることもあります。また、学校によっては小学校、中学校並みに遅刻や欠席、学校での変化について保護者に報告や相談をする学校もあります。その学校や学科が医療系、心理系、福祉系だと教員が障害に詳しいため、気にかけてくれたり、適切な支援をしてくれる可能性があります。画一的な支援体制や設備が整っているよりも、教職員が障害者への支援は個別性が高いもの、という支援の基礎を知っている方が安心できるかもしれません。

発達障害者ならではの就活での困りごと

ASD特性が強い方の例

自閉症スペクトラム(ASD)の場合、意思伝達の質的な障害や対人的相互作用の質的な障害や特有のこだわりが症状として挙げられます。自分のこと、自分の考えていることを他者に伝えるのが難しく、相手の伝えようとすることに言葉以外の遠まわしな意味が含まれていたり、率直な表現でない話し方などは理解が難しいのです。また非言語的コミュニケーションの手段に乏しいため、表情やジェスチャー、言葉の抑揚などがほとんど、もしくはまったくありません。つまり社会人の基本として、ある程度、高いコミュニケーション能力が求められ、試される場である就職活動では非常に困難なことが起こる場面が想定されます。

 

例えば、最初に電話での面接などのアポイントメントを取る際は、言葉だけでのコミュニケーションになるため、伝え方が直接過ぎたり、型どおりの言葉だけになったり、その上、言葉に就職したいという熱意や感情が込められなかったりします。

また面接の場面では自己アピールや会社や仕事への情熱を伝える必要がありますが、それらを言葉で表し、その場に応じた感情を表情やジェスチャーで表したりすることは自閉症スペクトラム障害のある人にとっては不得意とする状況です。またこだわりが強いと、そもそも場所の変化や状況の違いに馴染めないため、面接の場に行ったとしても落ち着かず挙動不審になったり、自分の気になることに集中しだすと、相手の言葉が聞こえないこともあり、質問に答えたり、指示のとおりに動いたりすることも難しくなります。発達障害を持たない学生と内定を争うのは非常に厳しいと言えるでしょう。

 

ADHD傾向が強い方の例

ADHD(注意欠如・多動性障害)がある場合、代表的な症状として衝動性があります。衝動性があると、あまり考えずに行動してしまい、行動自体が早いことはメリットの部分もありますが、言い換えれば計画性に乏しいため、就職活動をする場合に自分で学校の授業やアルバイト、そしていくつかの企業での受験を掛け持ちするというような多面的な活動は非常に難しいと言えます。ADHDだけで知的な遅れや他の疾患がなければ、書かれている予定表・計画表やプログラムの理解はできます。また衝動性への対策として普段からメモ帳やスマホに予定や課題などのやることをメモする訓練もできます。しかし衝動性が強いと、いつ、何時までにどこかに行くという理解はできていても、途中でいろんな誘惑に興味を惹かれれば、予定や計画のことはそっちのけになってしまうということです。また衝動性があると、コミュニケーションも深く考えず、思ったことをずばずばと言ってしまうことが多いため、相手が採用する側の人間だったとしても、平気で相手への気遣いや遠慮などが感じられない話し方をしてしまうという失敗もあります。これでは上司や先輩を敬うとか、取引先への営業や接待などができるとは採用する側はきっと思えないでしょう。また衝動性が強いと、書類やその他のタスクも遅々として進まず、期日に間に合わないことも多くなります。

発達障害の就活の進め方3ステップ

自己分析(自己の特性の把握)

発達障害を含む障害があることにより、その特性で社会になじめないことや、社会参加に不利がある場合、一般の企業などで就職活動するには自己分析、自己覚知、自己理解といわれることをやるのは非常に有効です。

 

この手法は就職活動をする一般学生にも進路指導や就職活動の支援プログラムなどで使われる、非常にポピュラーなものです。障害がある人の自己分析も障害がない人の自己分析と特に変わりません。

 

自己分析では自分で簡単にできる方法から心理的な記述式テスト、そして今では複数の就活支援サイトでも簡単な入力で質問に答えていくだけで自己分析ができたりします。

もし、今まで本格的に自己分析を経験していない場合、パソコンでも、手書きでも構わないので、自分の性格的な長所・短所、普段の生活(家事、学業を含む)の中で得意なことや不得意なこと、好きなこと嫌いなこと・もの、今まで取得した資格・免許や段、表彰されたこと、発達障害などがある場合、さらにここに障害特性を加味して具体的に何ができて何ができないのかを実際に書き出していきましょう。

ウェブサイト上の自己分析ツールは手軽ですが、自分を具体的に分析するには一度、しっかりと考えながら書いてみるという作業をする方が整理できるでしょう。自分のプラス面、マイナス面について理解することは、どんな職業が向いているのかについて考える際に大いに役に立ちます。特にマイナス面については、そのマイナス面をどのように改善したり、カバーするのか具体的に考え、就職活動に向けてそれらを実行することもできるようになります。

 

ポジティブ・シンキングやリフレーミングという手法を使い、マイナス面をプラスに考えたり、他者に伝えることも就職活動で内定を獲得する上で重要です。例えば自閉症スペクトラム障害のこだわりは一つのことに集中できる、注意欠如・多動性障害の衝動性は行動力があると言い換えることができるでしょう。

 

実際に面接の場面や採用試験の作文などでは、長所や短所について話したり、書いたりすることもよくありますのでそういう面でも自己分析ができていればすらすらと話したり、書いたりできます。

 

企業・業界研究

自己分析ができたら、次にどんな業界や業種が自分に合うのか実際に考え、インターネットで調べたり、気になる会社の求人資料などを取り寄せて、どんな仕事をするのか把握していきます。またその業界、会社で実際に働いている先輩や知人の話を聞いてみることも重要です。学校の就活へのサポートや会社の新卒募集の一環として行なわれることもあります。労働人口が減少し、人材確保が困難になっている昨今、障害者の採用に力を入れている企業も少なくありません。

 

例えば、欧米などの外資系の企業や、IT企業、新進気鋭のベンチャー企業などでは、合理的な思考や実践を重要視したり、人種や障害も気にしない風土があることが多く、コミュニケーションの面でも、日本よりもメールやSNSを利用することが多い傾向があり、この面でも障害特性でコミュニケーションが苦手という人にもチャンスがあると言えます。

 

障害に理解のある企業はインターネットなどを通して自分で探すこともできますが、このような企業を探したい場合は、是非、ハローワークなどの後述する公的支援機関を利用するのがおすすめです。自分がやりたい仕事と自分に合っている仕事は必ずしも一致するわけではありません。しっかりと企業・業界研究をして、就職後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないようにしたいものです。障害者の離職率が一般のそれよりも高いというのも現実なのです。

 

一般枠または障害者枠で求人先へ応募

発達障害を持っている場合、就職活動の際に考えていただきたいのは、障害がない人と同じ土俵で一般枠での採用を目指し就職活動をするのか、または国の障害者雇用促進政策に則った、障害者雇用促進法上の障害者枠での採用を目指すのかという点です。

 

就職活動は就職の始まりであって、採用内定をもらうことがゴールではありません。働き甲斐を感じ、安定した収入を得る、そしてキャリア形成をしていける、一般的にはそういう仕事に就くことが大きな目標ですが、障害を抱えている場合、一般枠で働いてこの様な目標達成することは現状ではまだまだ困難があります。

 

一般枠で働くように収入を得たり、キャリアを形成することは難しくても、今の自分の障害特性を理解し受け入れてくれる障害者枠で働くということも、無理をせず、長く安定して働くという意味では十分に考慮すべき選択肢と考えることができます。

 

最近では、障害者差別解消法などの障害者の社会参加を促進するための法制度の整備が進み、障害者の採用に際して合理的配慮をすることが求められています。現状では一般枠で働くより、障害者枠で働く方がより合理的な配慮を受けられます。当然、自分の可能性への挑戦として一般枠での就職活動もありです。しかし、何社も受けたけど採用にいたらない、採用されたけど働いてみたら思ったより大変で退職してしまったという時、この失敗を何度も繰り返して自信をなくしたり、安定した収入が得られないよりは、一度、障害者枠で働いてみるのもよいかもしれません。

 

逆に最初は障害者枠で働いてみて、物足りない、もっとできそうだ、と感じたら一般枠に挑戦してみる。自分に合った働き方、仕事はそういう探し方があってもよいのではないでしょうか。

就職活動に役立つ支援機関や事業の一覧

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは障害者雇用促進法の第27条に規定されている障害者の就業やそれに伴う日常生活、社会生活に必要な支援を行なう機関で、都道府県が設置し、社会福祉法人やNPOなどが委託を受けて業務を行ないます。業務内容としては、対象となる障害者からの相談に応じて必要な指導及び助言を行う、公共職業安定所、地域障害者職業センター、社会福祉施設、医療施設、特別支援学校などの関係機関と連携を取り就業に関わる総合的な支援を行います。また、障害者職業総合センターや地域障害者職業センターなどが実施する職業準備訓練を希望者に斡旋することも業務の一つです。

 

 

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は障害福祉サービス等について定めた障害者総合支援法下に行なわれている訓練等給付の対象となる事業の一つです。就労移行支援事業所では一般就労(一般の事業所で働くこと)を希望する18歳から65歳までの障害者について、一般就労に必要な知識や能力の向上の機会を提供します。具体的には、就労に関する相談、自分の自己分析をすることによって適切な仕事や業種などを考えるための自己覚知や適性評価、面接での礼儀や振舞い、質問への応答の仕方などを学ぶ模擬面接、履歴書の書き方、ビジネスマナー、パソコンなどを含むビジネススキル、人との関係を円滑にするコミュニケーションスキル、グループワーク、就職後の一定期間内のアフターケアなどがあります。

 

 

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは独立行政法人高齢者・障害者雇用支援機構が設置、運営する障害者の職業リハビリテーションに関する事業をおこなう機関です。同センターはハローワークを中心とし、その他の障害者の就労支援を行なう機関や事業所、障害者を雇用する企業などと密接に連携し、障害者の就労に関する様々な支援を行ないます。実際の支援内容としては障害者の職業適性などの評価、支援計画の策定、訓練や講習を通じた職業準備支援、職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業、精神障害者総合雇用支援、事業主に対する相談・援助、地域内での障害者の職業リハビリテーションネットワークの構築、地域の関係機関への障害者の職業リハビリテーションに関する助言や援助などを行なっています。

 

ジョブカフェ

ジョブカフェは正式には「若年者のためのワンストップサービスセンター」という名称で、都道府県が設置する若者の就職支援を行なう施設です。ワンストップというのは、就職支援のさまざまなサービスをその施設1か所に行くだけで受けることができ、わずらわしさがないということです。公的な支援サービスのため、当然利用料は無料です。実際のサービス内容としては就職に関するあらゆる相談(カウンセリング)、職業紹介、就職セミナー、職場体験など多岐にわたります。

 

ハローワーク

ハローワークは公共職業安定所としても知られる、国民の就労を支援する公的機関です。ハローワークには障害者専門窓口があり、障害者向けの(障害者雇用枠の)求人を紹介してくれるだけではなく、障害者専門の支援員が就職に関する様々な悩みや疑問に答えてくれたり、適切な職業、職種など就職全般にわたる相談にも乗ってくれます。上述した地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターなどの他機関とも連携し、個々に合った適切な支援をおこなう頼れる機関です。公的な機関で原則無料で利用できますので、発達障害のある人も、是非一度、ハローワークで相談をしてみましょう。

 

障害者能力開発校

商業能力開発校は職業能力開発促進法という法律に基づいて国が設置し、都道府県(一部高齢・障害・求職者雇用支援機構)が運営する、または都道府県が設置する、障害者に対する職業訓練等を行う機関で全国に約20カ所ほどあります。知的、精神、発達などの各障害特性に適した職業能力を身につけるための、多くは半年から1年の訓練期間で行なわれる訓練コースを設置しています。コース科目は各校で違いますが、多くはオフィスソフトやCAD、ウェブデザインなどパソコンを使用した技術の習得、事務仕事、社会生活をするための基本的な訓練などがあります。障害者能力開発校を利用するにはハローワークで職業相談を受けて、入校を希望する場合は願書を提出し、選考試験に合格する必要があります。障害者の就労支援サービスの一環となりますので受講料は無料ですが、食費等費用が発生するものもあります。急がば回れという言葉もあります、これといった特技や技術がない場合は訓練を受けるのも就職の近道と言えます。

 

障害者向け就職エージェント

障害者向け就職エージェントとは国に認可されて障害者雇用枠の求人などを取り扱い、障害者の就労をサポートする民間の事業所です。ここ数年、国際社会の動きを受けた国による障害福祉サービスの向上施策などにより、障害者の就労支援が充実し、障害者の一般事業所での就職率が上がっています。それに伴い、これらの障害者向け就職エージェントのニーズも高まり、事業所も増えています。これらの事業所は公開求人はもちろんのこと、事業所独自の非公開求人を持っていたり、障害者に特化したキャリアアドバイザーがいるなど、それぞれに強みがあります。こちらのサービスも原則無料で利用できますので、利用しない手はないでしょう。

まとめ

発達障害者を含む障害者の大学への進学率や就職率は毎年高くなってきている傾向があります。国が「障害者の権利条約」を批准して以降、国が障害者の大学等への進学や就労などの学習の機会の平等や社会参加を推し進めてきた成果が実ってきているとも言えるでしょう。

 

現在、障害のある人にとって、進学するのか、就職するのかはその人の希望や適性をしっかり考えた上で本人と家族が話し合って決めるのがよいでしょう。

 

よりよい人生の選択をするために、大学等へ進学する場合は、進学した場合、発達障害がるとどのような困りごとがあって、学校はどのような支援をしてくれるのか事前に理解しておくことはとても重要です。

 

就職する場合まずやることは、自分の性格や能力、向いていることを見極める自己分析、そして実際に自分が希望するその企業、その業界で自分が働いていけるのか、障害がある場合にどのようなサポートがあるのかといった企業・業界研究、また一般枠で働くのか、障害者枠で働くのかも大事な選択です。このような就職に関わる公的な支援をする機関にはどんなものがあるのかも紹介しました。

 

よりよい選択をするためには事前に学習すること、情報を集めることはとても重要です。

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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